勘右衛門から兵助の話を聞いていた時、表面上では興味なさ気を取り繕ってはいたが、実のところ二度ほど驚いていた。
一つは、恋慕しかけている節があるという、堅物代表みたいな兵助について。 もう一つは、あの奉公娘が私たちよりずっと年上の女だったということ。
(いやしかし……)
前に廊下で会った時、つい変装をする時の癖で彼女の全身は見抜いていた筈だったが、それといって女性らしい体つきではなかったように思える。むしろ、顔つきからしてせいぜい13、4といったところだとばかり思っていたのだが。
(やはり異国の者か、若しくは妖怪の類か……)
おかしな気配は全く感じられなかったが、用心しておくに越した事はないだろう。 ――そんな事を考えながら、勘右衛門が隠したという春画のある空き部屋の前までやってきた。
(ん?)
襖に手をかけた時、なんだか空気が違うなとは思ったんだが。 それよりさっさと春画でも見て気を抜いてしまいたかった俺は(健康的な男子ならば当たり前のことだ!) すっと襖障子を開けて足を踏み入れた。
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