「えっ、いや、いやいやいや!!」


目の前に広がる広大な海。
雲一つない澄んだ空から太陽が、これでもかと海面を照らすから眩しくてかなわない。


「――じゃなくって、なんで海!!? おばあちゃん家は!? クローゼットは!!?」


一人ツッコミしていると気付いた、ゆらゆらとこちらへ向かってくる一隻の船。
現代人の私はてっきり救助隊だと勘違いし、両手をぶんぶん振って助けを求めた――のがよくなかった。


「女ァ! 死にたくなけりゃ黙ってこの船乗りな!!」


近付いてみてわかったけど、明らかに救助隊じゃない。むしろカタギですらない、崩れた着物?みたいな奇妙な格好したおっさんたちが船からぞろぞろ出てきた。
にやにやとこちらを見る視線に、女としての危険を感じたそのとき、


「うちの縄張りで女攫うなんざ、いい度胸してんじゃねえか。」
「ちっ、兵庫水軍の奴らだ! 舵取れ、ずらかるぞ!」


急いで船に乗り込むとくるりと反転して海原へ去っていく。
ふうーと胸を撫で下ろし、助けてくれたヒョーゴスイグンさんとやらにお礼を言おうと向き直ると


(こ、こっちもカタギじゃない…!!)






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