金楽寺へお使いに行った乱太郎きり丸しんべヱが連れ帰った女の子を見て、吃驚しすぎてわたしは一瞬世界が止まったのではないかと思った。
彼女の着ているあの制服はわたしのものとよく似ていて、女の子は間違いなく室町時代の人ではないだろうとすぐに解った。姿形も現代からやってきたわたしの方によく似ている。尤も、彼女はとても美人さんだったけれど。
もしわたしと同じ現代からやってきたのだったら、きっと彼女も不安なんじゃないかと。実はわたしも、隠しているけどこの時代の人間じゃないんだよと、一方的な親近感から何か話をしたくて、でもなんと言って近づけばいいか分からなくて、そうこうしている内に雷蔵に頼まれて本を図書室に運ぶ事になった。彼女が刺すように真っ直ぐわたしの背中を見ていたのなんて、気付かないで。


「すみませんハルさん、お手伝いしてもらって」
「えっ、あ、ああうん大丈夫気にしないで! 暇だったし!」


ぼんやり彼女の事を考えていたので、雷蔵に申し訳なさそうに話し掛けられて変に動揺して返答してしまった。あの人、どこかで見た事あったような……いやでも印象的な眼だったし忘れなさそうだから人違いかな。


「……先程の女性の事ですか?」


何かを察したように雷蔵は斬り込んできた。元々彼には、彼だけにはわたしが本当はどこの誰であるか伝えてあるから、肩の力も少しは緩くなるというもの。


「あの人、ハルさんが持ってらっしゃる着物とよく似たものを纏ってましたね」
「うわ雷蔵すごいね、よく見てますね」


本当に、わたしが制服を持っていた事もその形容もよく覚えていたなあと感心すれば、そりゃあ僕は忍者のたまごだもの、と彼は微笑んだ。




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