図書室に本と雷蔵を置いて庭に戻り外掃きを再開しようとしたところに、土井先生がちょっと来てくれるかと真剣な顔つきでわたしの手を引いた。どうしたんだろうと向かった先は学園長先生の庵だった。


「土井先生、どうかされたんですか?」
「私も訳がわからないんだが、まず学園長先生のお話を聴いてくれるか、ハル」
「はい」


失礼します土井です、と先生が襖を開ければ中には学園長先生と山田先生、それにさっきの女の子が神妙な顔付きで鎮座していた。彼女はまた、その綺麗な大きい目を更にまん丸にさせてわたしを見上げたが、すぐに学園長先生に視線を戻す。


「ハル、入りなさい」
「は、はい」


なんだこの重苦しい雰囲気は、と思わず後込みしそうになる。とりあえず名も知らぬ彼女の横に正座をすれば、学園長先生が口を開いてこう尋ねた。


「ハルはここに来る時に、何かおかしな夢は見たか」
「はい? 夢ですか?」
「そうじゃ」


いや見てない、というより何故ここに来たのかも今でも分からないままだ、と素直に話せば山田先生が確かにハルの場合はそうでしょうな、と相槌くれた。どういう意味なんだろうか。


「その方、アキと言ったな。アキは毎夜毎夜、この学園が火の海に包まれる夢を見たと」
「はい。火の海に包まれるのは裏の山で、食い止められずこちらの方々が亡くなっていく、とても恐ろしい夢を見ました」


え、えええ何だそれ悪夢だなあと隣で聞いていると、彼女は震えた声で「私は幼い頃よりしばしば正夢を見てきました。どうか信じてくださらずとも、このような事があるかも知れないそれだけは忘れないで下さいまし」と頭を下げていた。エッなにこの人すごい、巫女さんか何かかも知れない。




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