「喜三太なんか嫌いだ! もう知らない!!」 「ぼ、ぼくだって嫌いだ! 金吾のわからずや!」 「!!?」
洗濯を終えて中庭を歩いていたら耳に入ってきた喧騒。聞き覚えのある名前を叫ぶその声は、両方ともにヒステリックに近い高い声をしていた。 わたしは何事かと、長屋の縁側から対象の部屋を見守っていると、転がるように金吾が出てきた。彼は目の前にわたしがいるのも、怒りからか気付かないまま母屋の方へ走り去る。開かれた襖から、床にへたり込んだ喜三太が肩を震わせているのを見えた。おそるおそる声をかけてみる。
「き、喜三太、どうしたの? 金吾と喧嘩した?」 「!! あっハルさん……」
俯いていた彼は話しかけたわたしの顔を見ると、くしゃりと目元を歪ませた。やばい、これ泣くんじゃないかしら。と、思ったのも一瞬、うわあああんと目からポロポロ涙が落ちる。
「わ、わあ泣かない泣かない! 何があったの話してみなさい!」
ジブリのメイちゃんみたいにわんわん泣く喜三太を前に、あたふたするわたしは急いで縁側に腰掛け彼を隣へ手招きする。感情が爆発してしまっている喜三太は、四つん這いで縁側までやってくるとわたしの横に座り、舌っ足らずに事の真相を話し出した。
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