すんすんと鼻を鳴らす喜三太が話すに、こんな感じだそうだ。
「つまり、喜三太のなめくじ壺が空いてて、そっから出てきたなめくじさんたちが金吾の洗ったばかりの私服を駄目にしちゃったんだね?」 「う、うん」 「そっか」
まーでもこれは確かに喜三太の不注意が起こしたものだからな〜彼が金吾にちゃんと謝れば丸く収まる話なんじゃないかしら。
「ぼっぼくが謝ろうとしても、なんでか金吾、全然聞いてくれなくてっ」 「うんうん」 「それでね、ぼくが私服ちゃんと洗って明日返すよって言っても、それじゃ意味ないって怒ってね、」 (ん? 意味ない?)
意味ないというのは、明日中に何が私服が要る用でもあるのだろうか? ともあれ、喜三太の様子を見るに反省はしているようだし、いつもの金吾の態度からではちょっと思い付かない経緯に、わたしは彼の言い分も聞かないといけないなあと思った。何より。
「……金吾、ぼくのこと、ほんとうに嫌いになったのかなあ」
そんな風に肩を落とす隣の男の子を放ってはおけなくて、早く二人がまたいつもみたいにきゃっきゃと仲良く笑いあってる姿が見たかった。
「大丈夫、金吾が喜三太を嫌うなんてないよ。きっとね」
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