――乱太郎目線――



「よし、そろそろ作業やめようか」
「そうだね〜」


保健室にて。夜も遅くなってきたけれど今日は当番だったから、伏木蔵と居残って薬の整理をしていたら。


「……なんか廊下が騒がしくない?」
「うん、誰かが来るみたい。怪我かなあ」


伏木蔵が訝しい顔をして襖に目を向けるのと同時に、そこが開かれた。まず目に入ったのは、ぽたぽた滴り落ちる水と足袋。徐々に視線を上にずらしていくと、中在家先輩が子どもを抱き抱えるようにハルさんを運んできた。先に口を開いたのは伏木蔵だった。


「中在家先輩、ハルさん、どうしたんですか?」
「……事故で……池に落ちた……」
「わあ、それは大変です。早く着替えさせないと身体が冷えてしまいます!」


あたふたと箪笥から厚い布を取り出す間に、ひょこっと現れた五年い組の尾浜先輩、久々知先輩がハルさんを布団に寝かせてくださった。
えーと、まず渇いた布で身体の水滴を拭って、池の水は冷たいから風邪を引かないように、お湯で絞った布を使って皮膚だけでも暖めないと!


「じゃ、先輩方はちょっと席を外して下さい〜」
「いやでもお前らだけで出来るか?」
「大丈夫です、僕たちだって保健委員ですから!」


久々知先輩が心配げに声をかけてくださった時、スパッと襖が開いて現れたのは我らが保健委員長と、眉を下げた潮江先輩。


「長次、勘右衛門、兵助、運んでくれてありがとう。あとは僕が」




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