保健委員とハルさんだけになった空間。伏木蔵だってこの状況がなにか変だとわかってるけど、今は意識を手放しているハルさんに集中するべきだ。
伊作先輩は彼女の水分を含んで重たくなった寝着の前合わせを解いた。てきぱきと念入りに身体を拭いていく。


「伏木蔵、ハルさんの上体支えてあげて、乱太郎は風呂から桶にお湯をもらってきてくれるかい」
「はいっ」


私は返事をするとタッと立ち上がり襖をガラリと開けた。


「……なーにしてんですか、先輩方」
「い、いやハルが心配でな」
「同じく」


保健室の前には襖にぴったりくっつくように近い潮江先輩と、逆に襖に背を向けて胡座をかいて廊下に座り込む久々知先輩がいた。
潮江先輩のしどろもどろもそうだが、久々知先輩もどことなく不機嫌なようで気になる……いやいや今はそれどころじゃないか、急がないと!


「介抱の邪魔しちゃだめですからね!」
「わ、わかってる」


どうにも、いつもの潮江先輩らしくない気弱な態度に疑問符を浮かべながらも風呂の方向に急いだ。


… … …


「――あれ、乱太郎、まだ委員会終わんねえの?」
「あ、きりちゃん」


ちゃぷんたぷんとお湯を張った桶を抱えて医務室に戻る途中、就寝前だろう寝着姿のきり丸に出会った。先に寝ちまうぞと笑うその同室者にやや早口で返す。


「まだ帰れないよ、ハルさんが倒れたらしくて意識がないんだ」
「なんだって? オレも行くよ」
「え」


いきなり形相が変わったきり丸に気圧され、結局二人で早足に医務室に戻った。




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