――善法寺目線――



「あ、見て留三郎。ハルさんまた一年は組と鬼ごっこしてるよ。元気だなあ」
「……」
「留三郎、留さん!」


庭を駆け回る兵太夫や虎若を追いかけているハルさんから目を離さないまま、留三郎は「悪い、意識飛んでた」と言った。
彼が誰かを好きになるのはこれが初めてではないからわかるけど、(四年のとき先輩くのたまに恋慕した時も同じ反応だった)あまり判りやすいのも考えものだ。


「留三郎、君ってほんとにハルさん好きだね……」
「なっ!!?」
「独り言だよ、気にしないでくれ」
「い、いやちげーからな、俺は別に、ただあの人最近痩せたっつーか、」


ちょっと顔色悪くないかと心配してただけだ。

……人はそれを恋の始まりと呼ぶんだよ、と思ったけど言わなかった。ハルさんの、あれだけふっくらしていた頬が変に痩せこけているのは事実だったから。
文次郎みたく鍛練をしてるような身の絞まり方ではない、飢えた子どものような、食べ物からの栄養が与えられていないのは明白だった。


「体型の変化もそうだけど、全体的にハルさん、変わったと思わないかい」
「それは土井先生の件か?」
「違う。色恋沙汰は抜きにして、なんだか……」


なんだか、知らない人みたいだ。




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