その夜。医務室でいつも通り色々な薬を作り出そうと、草葉を調合していたら、少しぬるま湯が必要になって食堂へ足を運ぶことにした。おばちゃんに頼んで水を温めてもらおうか。


「おばちゃん、すみませんがぬるま湯を少しいただけますか?」
「あら伊作くん。はいちょっと待っててねー」


おばちゃんに湯を頼んでいる間、誰もいない食堂で席に着いていた。……あれ? 誰もいない?


「あの、ハルさんはどうされたんですか?」
「ハルちゃん? ああ、なんだか体調が優れないようだったから先に休ませたのよ」


最近はあたしの料理も手を付けなくなって、どうしちゃったのかしら。
心配そうに頬に手を置いて眉を下げる優しい人に、大丈夫きっとすぐに元の彼女に戻りますよ、と無責任な返しをする。でも僕も気になるし、ちょっと声を掛けてみようか。


… … …


「ふう。これで一段落」


さて、そろそろ完全撤退しなくちゃな。まだ固まっていない液状のその薬を壷に入れると、僕は医務室の襖を閉めた。扇いで早く熱を取らないと成分が半減してしまうから、部屋に持ち帰らないと。でも部屋で薬関係のことをしたら、臭いとまた留三郎に怒られるかな。なんて考えながら廊下の曲がり角に差し当たると。


「あ、ハルさん」




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