――乱太郎目線――



「あれ、ハルさんだ」


一年は組のみんなと運動場でサッカーしていたら、ふらふらと覚束ない足どりでこちらの方にやってくるのはハルさん。一番最初に気付いたのは私じゃなくて団蔵だった。


「どうしたのかな、顔色あんまりよくないね」
「お腹が空いてるのかも」
「それはしんべヱ限定だろ」


はは、と八重歯を見せて笑ったのはきり丸だったけど、目線はハルさんから離れなかったからきっと心配なんだろうなあ。私たちは駆け寄った。


「ハルさーん!」
「!!」


名前を叫ばれて一瞬びっくりした彼女は、俯きがちだった顔をひょいと上げた。その時、これは私だけかもしれないから何も言わなかったけど、私は、ハルさんなのにハルさんじゃないように見えたんだ。


「なんだかふらふらしてるみたいですけど、大丈夫ですか? 具合が悪いようなら医務室にご案内しますが」
「……きみは、しょうざえもんだね」
「? はい庄左ヱ門ですけ、!?」


遠くを見るような目をしていたハルさんは、ぼそぼそと庄左ヱ門の名前をなぞると、いきなりぎゅっと彼を抱きしめた。


「しょうざえもん、」
「え、な、ハルさん?」


目をぐるぐる渦みたいにさせて混乱する庄左ヱ門はもちろん、周りを囲んでいた私たちも突然すぎて訳がわからなかった。




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