あれ、おかしいな? と感じたのは、髪に手櫛を入れたときにすんなり通らなかった気がしたからだった。
「まーずっとリンスもコンディショナーもしてないしな〜……仕方ない」
そういえば、ここに来てからどれくらい時間が経ったのだろう。少なくとも一月近い夜は越えてきている。
「みんな元気かなあ……」
お母さん、手伝いしないままいなくなったから怒ってるかな。ちびっこたちは、まだ隠れんぼを続けているかな。 わたしはどうなっているんだろうな。 知る術のない人たちは皆お元気ですか? と、室町に来て初めてのセンチメンタルホームシック。
「会いたいな……」 「じーーっ」 「おわっ!!!」
自室から出て散歩でもしようかと、引き戸に手をかけたら隙間から見えた。何がって、あの、土があったら取りあえず掘り起こしとけ、みたいな穴掘り少年が!
「あっあやっ綾部くん君ねえ! びっくりするでしょう!」 「誰に会いたいんですか?」 「え、えーっと、まあ色んな人ですよ」
しまった聞かれていたか。 だけど、平成とか致命的な単語は呟いてなかったから大丈夫だろ、うん。
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