「で、綾部くんはわたしの部屋の前で何をしてたんですか」
「お誘いにきたのでーす」
「はあ」


彼は高らかに言うやいなや、ガッと外見に似合わず男らしいその掌でわたしの手首を掴むと、そのままずるずると部屋から引きずり出す。えっちょっ、おまっ! まだわたし了解とも何とも言ってないですがァァァ!!


「あのーどこにいくんですか……」
「僕が掘ったターコちゃんの所です。眺めサイコー程よい日陰と日差しで昼寝にぴったり」
「えっ穴ん中で!?」
「そうですよー」


何言ってんの当たり前でしょ、と言わんばかりに綾部は肯定する。聞いてないですよそんなん。というか以前この子の穴に落ちて、袴や何やら一切合財洗濯行きになったんだからな!


「ちょっ、むり、むりです仕事があるんで!」
「サボっちゃえばよくない?」
「うんよくないよね!」


なんだこいつ自由すぎる!
わたしの心の叫びも気付かないまま、がっつり掴まれたままの手首をどうしたら抜けれるものかと考える。


「……あなたが、」
「え、」
「ハルちゃん久しぶりだねえ」
「あ、タカ丸くん」


いきなり声のトーンが落ちた綾部がなにかを紡ぎ出そうとしたが、それはタカ丸の登場によって空に消えていった。




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