富松くんたちを見送った後では、もう既にトーナイらは消えており(そりゃそうか) 結局わたしに箒の在りかを教えてくれたのは、前々から近づいてみたくてしょうがなかったヘムヘムだった。
「ヘムヘムさん、どうもありがとう」 「ヘム!」 「ははは……(やっぱ何言ってるのかわからん、でもかわいいな)」
「ヘムヘムにさん、て」
呆れたような驚いたような、そんな声音が聞こえて門外を振り向くと、ものすごく見覚えのある茶髪がいた。
「あーー!! あの時の誘拐犯!!」 「んなっ? その言い草はないだろう!」 「アッすいません!」
つい反射的に謝ってしまったが、あながち誘拐犯は間違いではないと思いますよ。まあ助けられたのでもう何も言いませんが。
「何の用ですか?」 「君こそこんな場所で、何してるんだ」 「箒を持ってますよねわたし。今から外掃きですよ」
小松田くんに頼まれたので。 付け足すと、彼は切れ長な目を真ん丸にして顔全体で驚いてみせた。
「は? いやちょっと状況がよく……」 「ヘム! ヘムヘム!」 「ええ!? なに君、ここで奉公してるのか?」
……忍たますげえ。ていうかこの人すげえ今ヘムヘムと会話したってことだよね。慣れなのかな。素直に感心した。
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