食満の前で拉致ったわたしを担いで走っていた彼は、よいしょ、とようやく座った。多分どこかの長屋の廊下だろう、日当たりがすごくよくて眠たくなる。
……というか、この人誰なんだ。新キャラなんだろうけど、四年とか言ってたな。


「あ、あのー」
「ぷりん作れますか」
「……はあ」


思わず気の抜けた返事をしてしまった。予想外の更に斜め上をいく単語というのもあるが、何よりこの子が真正面からわたしを見据え大真面目に問うからだ。プリン好きなのかな。


「えーと、卵と牛乳と砂糖があれば、基本的なものは作れると思います多分」
「今度僕に作ってくれませんか」
「あ、はい、できたら」


この時代にプリンの材料があるのかが問題だけど、蒸し器はでっかいのが食堂にあったから頑張れば作れると思うんだけど……と、うんうん考えていると、彼は、よかったと一言いうとそのまま廊下に寝転んだ。


(なんか猫みたいだな)
「あ、ちょっと貸して下さい」
「ひっ!」


そのまま自分の腕を枕にしていればいいもの、彼はわたしの腿にゴロンと頭を乗せてきた。ひざ枕か、ひざ枕がしたい時期なのか。まあ、いっか。
それよりこの子なんて名前だったっけ?
なんて疑問も知らず、ぐうぐうと寝息を立てている。




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