早くしないとお昼休みが終わってしまう。
一番奥の扉の前に立っていると、入ってきた男子がぎょっとしてそそくさと消えていった。
一瞬、しーんとした空気。
ため息を噛んで扉に目を向ける。
いくら鍵をかけても、マークは灰色のまま。
開かずの扉なんて言われているのは知っているのだろうか。
ぺろっちい扉の向こうにいるはずの彼に声をかける。
「にーおーうくーん、あっそびーましょー」
コンコンコン、
「にーおーうくーん、あっそびーましょー」
コンコンコン、
「…ぴよっ」
扉の向こうでひとつ鳴き声。
やっぱりいた。
彼の機嫌を損ねないように出かけたため息を吸い込む。
お世辞にも、あまり深呼吸はしたくない場所である。
こんなところに1人引きこもって昼休みを過ごすなんて。
便所飯とは、哀れなり。
「出ておいで。一緒にご飯食べよう」
「…」
「仁王、」
かちゃん、
控えめに鍵の開いたような音がしたけれど、如何せん馬鹿になってしまった扉は開いたか開いていないか、全くわからない。
少し扉が軋む音と、開いた隙間からこっちを見ている目を確認してようやく扉が開いたのだと認識。
「どこに、行くんじゃぁ…」
「部室裏」
天気がいいからね。そういうと隙間を通り抜けてこちらにきた仁王がへらりと笑う。
「この間の猫さん、おったらえぇのぅ」
全く世話が焼けるのだから。
トイレ前に置きっぱなしのお弁当たちが心配だから早く行きたいものだ。
「そうだねぇ」
あの猫は私と仁王以外がいると姿を見せない。
トイレの仁王くん
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