(幼馴染+おバカな受視点)木幡こなた


俺は木幡こなた。
ある日、俺より頭が良くて眼鏡をかけてて読書が趣味のあまり喋らないクールでかっこいいけど身長が低い事がコンプレックスな幼なじみの白凪由貴のこと、ゆうちゃんが俺に珍しくお願いをしてきたのだ。

いつもなら俺がゆうちゃ〜んゆうちゃ〜ん!ってテスト前とか暇で構って欲しいとか助けて欲しい時に俺から突進してヘルプミー!を言う事が多いけども、本当に珍しくゆうちゃんからお願いをされたのだ。いつぶりだろ、ゆうちゃんからお願いをされるのって。


「お願いってなぁに?俺に出来る事?」
「あぁ……俺の恋人のふりをしてほしい」
「?!」


まさかの!恋人のふり?!恋人のふりでありまするか?!


「3日前くらいからしつこい奴がいて、つい、恋人がいるから諦めろって言ったんだ。そしたらその恋人を見せろと言われてな……頼めるのはお前しか思いつかなかった」
「俺でいいの?俺でよければやる!」
「……いいのか?」
「うん!ゆうちゃんを困らせてる奴なんか俺がボコボコに退治してやる!」
「ボコボコにしなくていい。俺の横にいるだけでいいから」
「えー」
「明日、頼むな」
「はーい!」


よーし!いつもは俺が助けてもらってるから頑張ってゆうちゃんを助けるぞ!久しぶりにゆうちゃんと沢山話してくれたし!バリバリ頑張っちゃうぞ!

この日の帰りはゆうちゃんは図書委員(兼読書部)で俺はテニス部だから一緒に帰れずにバラバラなんだよね。と、言っても中学生になってから一緒に帰ったことは無いんだよなぁ。高校が一緒なのは偶然と言うかたまたま?ゆうちゃんが俺と同じ高校に入りたいっていう希望があったとかなかったとか。朝は一緒に登校してるよ!俺とゆうちゃんは朝弱いから朝練はサボってるのだ!

俺とゆうちゃんの紹介はこのくらいかな?

翌日は恋人のふりを頼まれたから俺は朝からゆうちゃんと登校!恋人のふりをしなくちゃいけないから恋人っぽい事をすべきだよな!


「ゆうちゃんおはよー!おはようのチュー!」
「おはよう。キスはしなくていい。学校近くになったら手を繋ぐくらいでいいから」
「そうなの?」
「……したいならしてもいい」
「じゃあしちゃうー!」


抱きついてほっぺにチューしたら溜息を吐かれた!俺、ショック!


「行くぞ」
「ゆうちゃん、照れてないのー?チュー嫌だったー?ねーねー?」
「…………」
「無視するなよーゆうちゃーん」


俺を置いてスタスタ行くなよー!
ゆうちゃんは文系のくせに歩くのは早いんだよ!


「怒ったの?ねーねー?謝るから許してー!」
「うるさい」
「もー!協力しないぞ!」
「……それは困る。俺は別に照れても怒ってもいない。だからいつも通りにしろ」
「うーん、りょーかーい」


なーんだ。照れてもないし怒ってもないのか。
つまらないというか、寂しいというか、何か思うことがあって欲しかったなぁ。

それからはいつも通り俺がテニスの事やら昨日のテレビ番組の感想やら近日発売するゲームが面白そうとか話した。ゆうちゃんは相槌を打ってくれるだけ。聞いてはくれてるんだよな、この前はテニスの試合の話しをして聞いてないと思っていたら試合当日に応援しに来てくれてた。聞いてなかったのはゲームの話だったりする。

学校が近くなると俺からゆうちゃんの手を握った。恋人らしく恋人繋ぎ!恋人繋ぎアピールにブンブン腕を振ったらゆうちゃんに振りすぎ痛いって怒られた。しょぼぼーん。

下駄箱で履き替えていたらゆうちゃんに近寄る生徒が一人。


「白凪!まさかっ、そいつが恋人というのか!」
「はい。そうです」


ゆうちゃんは俺を引っ張って腕を組んだ。
うひょー!ゆうちゃんから組んでくれたなんて何年ぶり?!久しぶりで嬉しいなー!


「こんなブサ、いや、フツメンが?白凪に不釣合だ!」


ありゃ?俺貶された?まぁ、確かに俺はイケメンではないよ。寧ろ普通が一番じゃない?それに、


「俺、ゆうちゃんを楽々抱きあげれるよ!重たい荷物を代わりに持ってあげるし、えーとー、あ!ゆうちゃんの嫌いな食べ物を代わりに食べてあげれる!俺は馬鹿だけどゆうちゃんが頭いいから勉強を教えてもらえる!お互い足りないところを補っているのだ!」


ドヤァ!俺はゆうちゃんと不釣合じゃないぞ!
幼なじみだから高校で知り合ったお前なんかより小さい頃からゆうちゃんを沢山知ってるぞ!


「ふははっ、そういうことだから諦めてくれ」
「ゆうちゃん?!なんで笑ったの?!俺、真剣に言ったよ?!」
「……認めない!君達、全然恋人に見えない!どうせ白凪が恋人のふりをしてくれと頼んだんだろ?」


な、なぜわかったんだ?!
こいつ、エスパーか何か?!


「ゆうちゃん、どうしようっバレてるよっ!」
「……バカこなた」
「はっ、やっぱり頼んでたんだな。白凪は俺と付き合う……」


ゆうちゃんに迷惑をかけてるやつが途中で言うのを止めた。
何故なら、ゆうちゃんが俺の首に腕を回して引き寄せて顔を思いっきり近づけたからだ。

急に抱きつかれ、余りの顔面の近さに俺は驚いて固まってしまった。
ゆうちゃんが離れた後も、動けなかった。


「…………こなたとは恋人ですから。もう近寄らないでください。行くよ、こなた」


ゆうちゃんに引っ張られる。
その間も俺は固まっていた。

もう、頭の中は近付いてきたゆうちゃんの顔と、眼鏡越しの長いまつ毛と、鋭い瞳と、スレっスレの触れるか触れないかの唇に寸止めの唇からかかる息。

うひゃー!!ゆうちゃん、ゆうちゃん、ゆうちゃん、ゆうちゃん、ゆうちゃんっっっっ!!!
胸がドキマギしてヤバイヨー!!


「こなた、ありがとう」
「!」
「だけど、悪いが多勢の生徒に見られた。バッシングを受けるだろうが、1ヶ月は恋人のふりを続けてほしい」
「い、いいよ!」
「…………ごめん」
「謝らないで!頼れるのが俺だけなんでしょ!やる!ゆうちゃんの恋人やる!やらせて!」
「……恋人のふり、な」


ゆうちゃんが「ふっ」と笑った気がする。

なんでだろう、ゆうちゃんがあんな事をしたせいでまだ胸がドキマギしてる。
今まで感じた事のないドキドキ……治まるよね?
治まったら、いつも通りゆうちゃんと居れるよね?



俺の芽生えた気持ちに気づくのは少し先の話である。

−終わり−


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