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「邪魔するカスは叩っ斬るぞぉ!!」
煙が上がり、窓ガラスが飛び散る商店街。
次々に逃げ出す人達に、極悪面の銀髪は見えていないらしい。
今にも襲い掛からん勢いの男に綱吉が悲鳴を上げ、獄寺・山本そして見知らぬ少年が臨戦体制に入る。
「女子供は避難するぞ。鳶尾、来い」
「…京子、行くぞ」
レオンのハングライダーに乗って、リボーンは一足先に商店街を出て行く。
心配そうに綱吉達を見る京子の手を引き、ランボとイーピンを抱えてその場を離れる京都。
ゲームセンターにいたハルとフゥ太を連れ、飛んで来るガラスやコンクリートの破片から庇いながら走る。
住宅街へ抜け竹寿司が見えたところで、京都は京子とハルにランボ・イーピンを渡した。
先回りしていたらしいリボーンが、玄関に自分の刀とブレスレットを用意してくれている。
「この様子だと既に沢田の所に戻っているか…ここからなら大丈夫だ。京子、ハル、童共を送って帰ってくれ」
「えっ、京都ちゃん戻るの?」
「危ないです!京都ちゃんだって女の子ですよ、一緒に避難しましょうよ!」
「……すまない。私は女である前に、侍なんだ」
例え未練がましいと言われても、まだこの生き方を手放す気にはなれない。
この穏やかな世界にでも自分の力はまだ使い道がある。
今のままの自分でも、出来ることはある。
少女二人の優しい声を背に受けながら、京都は飛ぶようにして来た道を引き返した。
* *
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!
山本も獄寺君もやられた!
なんか青い死ぬ気の炎の男の子もやられて、俺も死ぬ気モードでも全然太刀打ちできなかった!
「ゔお゙ぉ゙い、何時まで逃げる気だぁ!?腰抜けが!!」
「わ!うわあああ!!」
やけにデカイ声のロン毛が剣を振り回して俺に迫る。
ダメだやられる!怖くて目をきつく瞑ろうとした。
そこへ、突然現れた影。
ガキッと金属と金属がぶつかる音がする。
目線を上にすると、細くも逞しい背中。ロン毛とは対照的な黒い髪。
小さい音を立てて伊達眼鏡がアスファルトに落ちた。
「公共物破損、営業妨害、傷害及び殺人未遂の現行犯だ――神妙にしてもらおうか」
「お前…!」
「鳶尾さああああん!!」
天の助けだああああ!!
何でこの人こんないちいちカッコいいの!?
泣きそうになってるとあの凛とした声で一喝された。
「モタモタするな沢田!その童を連れて離れろ、巻き込んでも責任取らんぞ!」
「はっ、はい!」
慌てて伊達眼鏡を拾って、男の子の腕を肩に回し背中を支えて立ち上がる。
鳶尾さんがロン毛にローキックして俺達との距離を広げたのを見計らってから狭い道へ逃げた。
女の子に助けられて情けないって思うけど、俺達の中で一番強いのは鳶尾さんだから今はこれが最善策だ。
『久し振りだなミツバ。まさかこんな所でお前にまた会えるとはなぁ!』
『何の事だか解りかねるな』
『惚けんな、俺は一度目ぇ付けた奴は得物も忘れねえ。その研ぎ痩せしまくったボロ刀…武器屋で見たぜ。間違いねぇ、あの時の女だぁ!』
「………」
『前は逃げられたがな、今日こそは手合わせ付き合ってもらうぜぇえ!』
何て言ってるかは解らないけど、ロン毛が鳶尾さんと戦う気満々なのは解る。
兎に角この人病院に連れて行かなきゃ、近くに公衆電話なかったっけ?ああこんな時にリボーン何処行ったんだよ!?
「うう…」
「!君、だ…大丈夫なの?」
「さ、沢田殿!拙者はバジルと言います。親方様に頼まれて沢田殿にある物を届けに来たのです」
「は?俺に?つーか親方様って…」
喫茶店のテーブルを倒して隠れ、バジル君?を座らせる。
するとバジル君は懐から、文庫本くらいのサイズの箱を取り出して俺に差し出した。
親方様ってことはボンゴレの偉い人かな…が、会ったこともない俺に何を渡そうっての?
バジル君が蓋を開けると、そこには8つの指輪。
なんだか歪な形で、装飾も厳つい。
鈍く光るそれを見て何だか嫌な予感がしたのは気のせいかな…?
「何かはリボーンさんが知っています」
「えっ、君リボーンを知ってんの?」
「リボーンさんは訳あって戦えません。これを持って逃げて下さい」
「ちょっ、急にそんなこと言われても――」
「ゔお゙ぉい!そぉいぅことかぁ、こいつは見逃せねぇ一大事じゃねーかぁ」
「「!!」」
「貴様らをかっ捌いてから、そいつは持ち帰らねぇとなぁ!」
ぎゃああああまた来たああああ!
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