白雪 U | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

少年の目的


日曜日の朝の竹寿司。
武は補習に、剛は町内会の集まりに出かけた山本宅の庭で、京都は一人剣の素振りをしていた。
使っているのは野球バット。先に錘がついた金属バットを3本束にし、それを軽々と振っている。
二百と彼女が呟いた頃、寿司屋の方で電話が鳴った。
剛が不在の間、出前を引き継ぐのは留守番の人間の仕事だ。
真選組ではなかった業務に少し緊張しつつ、京都は受話器を取った。
だが聞こえて来たのは聞き慣れた少年の声。

『京都!商店街に集合!』
「……まず5・6か所ツッコませろ」

今頃学校で補習を受けている筈の武からの電話。
しかも内容は恐らく遊びに行く誘い。どこからそんな話になったんだ。
何故自分も参加することになってるんだ。留守番はどうするんだ。

「サボった補習分はどうするつもりだ」
『ホントに6か所ツッコんだ…なあ頼むよー、帰ったらちゃんと勉強するから!』
「…次の数学の小テスト、80点台採るか?」
『うっ……と、採る!』
「……はあ…今からシャワーを浴びるから、20分後にそっちに着くようにする」
『っしゃ!サンキュー京都!』

武は勉強は苦手だがサボりをする程不真面目ではない。彼なりに真っ当な理由があったのだろう。
説教する前に言い訳くらいは聞いてやろう。その後みっちり補習タイムだ。
京都がほくそ笑むのと、武が大きなくしゃみをするのがほぼ同時だったことは、誰も知らない。



少年の目的



「はひー!京都ちゃんファイトですー!」
「早く早く!隼人兄のキャラにはキック技が効果的だよ!」
「させるか!これでっ、トドメだ!」

バキッドカッと痛々しい音に続いて、明るい電子音が流れる。
それと同時に獄寺は小さくガッツポーズをし、京都は溜め息を吐いてレバーとボタンから手を離した。
並盛商店街のゲームセンター前で綱吉達一行を発見した京都。
自分と同じように誘ったのか、リボーンは勿論沢田家の子供達に京子とハルと、大所帯でひどく目立っていて合流を一瞬躊躇った程だった。
フゥ太にせがまれて格闘ゲームをやってみたが、どうもゲームの腕はからっきしのようだ。同じく初心者のハルにも勝てなかった。
獄寺はフゥ太と、京都は山本と交代し、缶ジュース片手にゲームセンター内の椅子に腰を降ろす。

「で、唐突に補習をサボることになった理由をまだ聞いていないんだが?」
「十代目のお父様が帰って来られるんだ。十代目はお父様に、その…苦手意識がおありらしくてずっとお悩みだったから、気晴らしになればってな」
「…お前達らしい理由でよかった」
「お父様ご健在の点はスルーかよ」
「健在って…奈々殿が専業主婦でいれてるのだから、単身赴任で父親が稼いでいると考えるのが妥当だろう」
「ぐっ…そういや十代目は?」
「京子と一緒だ………沢田に気遣いが出来るならそこも察しろ。お前は頭がいいのか悪いのか、時々分からなくなるな」
「ううううるせーよバカ!」

綱吉の元へ向かおうと浮かせた腰を、再び椅子に勢いよく下ろす獄寺。
意外にも綱吉の恋心はあまり周りに知られていないが、敏い者にはやはり分かるらしい。
入り口から遠目に見える綱吉の顔はほんのりピンクに染まっていて何とも微笑ましい。

「…お前さ、その偉そうな感じいい加減やめろよな」
「親の遺伝なのでな。今更お前達のように話せそうにない、慣れてくれ」
「年寄臭え喋り方のことは言ってねーよ。同い年のクセにガキ扱いすんなっつってんだ」
「…そんなつもりはないのだが」
「花見で雲雀とバトった時といい黒曜に殴り込みに行った時といい、『いざとなったら止めに入る』って上から目線バリバリなんだよ。嫌味じゃなくてもよ……俺らが弱いって言われてるみてえで、腹立つ」

数回瞬きをする。獄寺がここまで自分に本音を打ち明けたのは初めてだ。
先日の黒曜襲撃の件で思うことがあったのだろうか。
だが自分は決して彼らを弱いと思ったことはない。
弁解しようと口を開いた、
その時だった。


―ドゴオッ!!

「ええ!?ぎゃああっ!!」
「!今の声…」
「十代目!」

爆音と共に、聞き慣れた少年の叫ぶ声が聞こえる。
一目散に外へ飛び出す獄寺に続き、山本と京都が声のする方へ駆け寄る。
するとそこには、見知らぬ少年の下敷きになった綱吉。
突然の事態に戸惑う京子に、状況がよく解らずポカンとしているランボとイーピン。
そして、

「ゔお゙ぉい!!何だぁ?外野がゾロゾロとぉ」
「ああ!?」
「…」
「な…何なの一体!?」
「!(あの男…)」

左手に剣を装備し、長い銀髪を靡かせる男。
かつて京都がイタリアで出会ったプライドだった。

prev / next
[一覧へ]