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生まれ変わった人魚

―フェイ兄、勝ったよ…
―人類が、巨人に勝ったよ…
―…でも…ごめん、ね…

―私…もう、みんなに…会えそうに、な…――




―2008-2009―



―ズガン!

大きな音に飛び起きる。
目覚ましを見ると8時半。やばい遅刻する。
5分で身支度してドアを開けると、隣の家のおばさんがゴミ出しをしているところだった。
しまった、今日プラゴミの日じゃん。もういいや来週に回そう。
自転車を出しながら挨拶する。おばさんって言ったけど私が生まれた時からの付き合いだ。年齢的にもお姉さん呼びでいい。

「あらあら、おはよう。陽菜ちゃんも寝坊なの?」
「おはよー奈々姉ちゃん。大丈夫、この時間ならマックス漕ぎで間に合うから」
「そう?急ぎすぎて怪我しないでね?ゴミも代わりに出しておくわね」
「ありがとー!いってきまーす」

にこにこ見送ってくれる奈々姉ちゃん、基沢田奈々。朝からいいマイナスイオンを頂いた。
そう言えば“も”ってことはあの子も寝坊したのか。
鈍くさいあの子が今から定刻に間に合う確率はかなり低い。今日校門に風紀委員立ってないといいね…!
心の中でエールを送りながら自転車を高速発進させた。
ところで、あの銃声みたいな音は何だったんだろう?

ちなみにばっちり間に合って登校してきた私に先生は「砂埃まみれだ、汚え」で終わりだった。
あの三角眼チビ、いつか泣かす。


   *  *


『助けて姉ちゃん!!』
「どうしたんだいつー太君(ダミ声)」

数日後の夜、泣きそうな声でケータイに電話してきたのはその鈍くさいお隣さんだった。
彼もまた、血の繋がりはないが私のことは姉と呼んでくれている。
どうやら部屋に来てほしいらしい。状況は解らないが向こうの外野が煩くて聞き取りにくい。
とりあえず隣の家へ向かう。お互い家の鍵を渡してる仲なので、チャイムは鳴らさず鍵を開けて中に入る。
奈々姉ちゃんに軽く挨拶をして2階へ上がり、目当ての部屋の扉を開けると知らない顔がずらり。
弟よ、いつの間にこんなに友達作ってたの…!

「女の子まで部屋に上げられるようになって…つー君成長したね!お姉ちゃん嬉しい…」
「姉ちゃんの中で俺って友達いない奴だったのーー!?」
「じっ、10代目!お姉様がいらっしゃったんですか!?」

今日も元気にツッコミをくれるマイエンジェル沢田綱吉。
そこらの女の子より大きな目をしてて笑った顔が可愛い弟分だが、最近思春期故か殆ど怒ったり半泣きの顔しか見てない。
ドジっ子体質だから学校でいじめられてないか心配してたが杞憂だったみたいだ。
若干一名は友達というより舎弟感が否めないが。

「生まれた時から隣同士でさ、もう家族同然の付き合いなんだ」
「“お隣の”お姉さんの、知朱陽菜。南並盛高校1年です、よろしく」
「はひ!ツナさんの言ってた助っ人さんってミナ高生さんですか!?」
「待てよ。知朱って苗字どっかで聞いたことあるような…」
「やっり、エリート校じゃん!これで落第回避できるな!」

待った、どこからツッコめばいいかわかんない。まず状況を説明しなさい。
曰く、明日提出必須の数学のプリントに超難問があって、全部解けないと落第にされるらしい。
………ほう。
とりあえず君達、

「中学に落第はない」
「「「「!!」」」」

補足しておくと私の高校は別にエリート校ではない。
帰国子女の生徒が多かったり、中国語やフランス語など外国語の授業があったり、他校に比べてちょっとグローバルなだけだ。
天才はほんの一部でギャルも不良もオタクも変態も奇行種もいて…そう、いろんな意味でグローバルなだけだ。

「ちなみに私はどのカテゴリだと思う?」
「姉ちゃん銀魂の新刊まだ?」
「今読んでるからちょっと待って」
「「「(オタクか/ですか…)」」」

後日聞いたところによると、例の難問は教師側のミスだった。落第云々は冗談で言ったらしく、真に受けたと知って爆笑されたとかなんとか。
多分言ったの私の兄だわ、ごめん。


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