白雪 | ナノ
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「おい、これはお前の物ではないか?」
「!え……!あっ、ありがとう、ございます…」

人混みの所為で危うく見失いかけたが、盆踊りの会場近くで漸く捕まえる事が出来た。
始めは何故声を掛けられたんだという顔をしていたが、差し出された財布が自分の物だと分かると、少年は頭を下げた。
慌てすぎたために眼鏡が少しずり落ちる。声変わり途中のような高い声に、明るい髪質の少年だ。
気弱そうな少年に京都は、礼には及ばないと軽く手を横に振る。申し訳ないと顔いっぱいで表現していた少年が少し笑顔になった頃、近くで聞こえる自分を呼ぶ声。

「…すまない、急用ができた。私はこれで失礼する」
「あっ、は、はい…じゃ、また……」

軽く少年に会釈してその場を離れる。今のは了平の声だ。綱吉がまたトラブルにでも巻き込まれたのだろうか。
人混みをかき分けて了平を見付けると、どうやら店の売上金が盗まれて綱吉が追いかけて行ったらしい。
――私に目を付けられたのが運の尽きだな…
眼を一人ギラつかせながら、了平と一緒に逃げて行った先である神社へと走った。



「……またって…会いたいって言ってるみたいじゃないか…」


   *  *


「ご無事ですか十代目!?」
「助っ人とーじょー!」
「見損なったぞ先輩方!」
「窃盗と暴行の現行犯だ。神妙にしろ」

途中で合流した獄寺・山本と階段を駆け上がると、神社の前で数十人の不良に囲まれた綱吉の姿が。
よく見ると不良の方は、先日海で遭遇した似非ライフセイバーの面々だ。すかさず獄寺がダイナマイトを爆破させた。
山本と京都がバット・木刀をそれぞれ構え、了平が咆哮しながら綱吉の援護に回る。
何故か雲雀まで。

「雲雀と初の共同戦線だな」
「冗談じゃない。ひったくった金は僕が貰う」
「なっ!」
「相変わらず横暴だな」
「やらん!」
「当然っス!」
「極限奪い返す!」

その後は早かった。並中屈指の猛者達相手に為す術もなく、不良軍団は敗北した。


――――――――――
―――――――
―――――

「好き放題してくれおって…折角の浴衣が砂まみれだ」
「気にすんなって!親父もそれぐらいで何も言わねーよ」
「変に着飾ってるよりボロボロの方が性に合ってんだろ、お前」
「言い方が気に食わん。一発殴らせろ」
「やんのかコラ」
「まーまー落ち着けよ!」
「そうだ!修理代は守れたのだから、結果オーライではないか!」
「でも、もう花火間に合わないよ…」

戦い終えた京都達は、雲雀から自分達の売上金を死守する事に何とか成功した。
結果、不良軍団と戦った時より傷を負う羽目になったが。
一しきり喧嘩を終えても元気な京都と獄寺に、それを宥める山本と了平。
その横で綱吉は、目標の時間がとっくに過ぎてしまった事にがっくりと肩を下ろした。
だがそこで、すっかり暗くなった鳥居を潜って近付いて来る明るい女の声。

「ツナくーん!」
「ツナさーん!」
「あっ、京都めっけー!」
「@*#&%!」

駆け寄ってきた京子・ハルとその腕の中にいるランボ・イーピンに、5人全員が「何故ここに?」という顔をする。
すると何時の間にいたのか、足元でリボーンが返答する。

「俺が呼んだんだぞ」
「!リボーン、お前…」
「勘違いするなよ。此処は花火の隠れスポットなんだ」

―ドォン!

途端に、夏の夜空に浮かんだ花。咲いては散り咲いては散りを繰り返して、無数の花を咲かせていく。
建物にも騒音にも邪魔されず、皆ただ黙って花火に見惚れていた。

「(…こんな穏やかに花火を眺められたのは、幼少の時以来だな…)」

ふと京都は、前の世界の自分を思い出した。本来なら将軍の櫓を囲んで眼を光らせているだろう。
今の自分には危険な対象は殆どなく、酷く平和ボケしている。だがそれが心地良い。
こんな日がずっと続けばいい。

柄にもなくそう思える夜だった。



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黒曜編は書ける気がしないので飛ばします。詳しくは次ページのなかがきにて。
ここまでありがとうございます。

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