白雪 | ナノ
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「ところで、鳶尾はどうやってこの世界に来たんだ?」
「あ、そうだ!一体何があったんですか?」
「確かに気になるな。聞かせてもらうぞ」
「正直に吐きやがれ」
「…獄寺以外は知っていそうだな。私は高杉に殺られたんだ」
「「!!」」
「な、何だよ?高杉って誰っスかリボーンさん?」
「鳶尾の世界の超過激派攘夷志士だ。早い話、鳶尾達真選組の強敵だな」
「ああ、奴は幕府か局長を討つように見せかけ私を狙ってきた。奴等にとって私は随分な邪魔物だったようだ」
「そんな…」
「見事に嵌められたわ。てっきり冥土に落ちたのかと思ったが、気が付けば見知らぬ土地の公園のベンチで寝ていた」
「…それが此処だったっていう事だな?」
「そうだ」

今までの事を淡々と説明する京都。まるで子供の頃の思い出話をするかのようだ。
実際京都は、無念ではあったが致し方ない事だと思っていた。自分の知能より高杉の知能の方が勝っていたという事だ。
それに、名前も知らない雑魚に斬られたと言うより攘夷志士の最高峰とも言える男の手に堕ちたと言う方が響きがいい。
今思えば高杉から異名の話が聞けたという事も、冥土でのいい自慢話になったかもしれない。
もっとも殉職した隊士達に会うどころか、誰も何も知らない全くの別世界に放り出されてしまったが。
フッと自嘲気味に笑った京都を、全員(ランボは勘定しない)が真剣な顔で見詰めていた。

「…リボーン。お前の事だから、どうせ鳶尾さんも並中に通わせるんだろ?」
「ああ、そのつもりだ」
「じゃあ、鳶尾さんも俺達と同じ中学2年生って事だよね」
「十代目…?」
「警察とか、漫画のキャラとかカンケーない、13歳の女の子だ」
「だなっ」
「鳶尾さん…こっちの世界では、その…昔の事は気にせずって言ったら可笑しいけど…フツーの女の子、でいて下さいね」
「…沢田、何が言いたい?」
「いや!あの、悪い意味じゃなくて…えぇっとつまり…お、俺達の友達でいてほしい、かなぁって……」

ともだち。
その単語を耳にして、京都は少し目を見開いた。耳慣れない単語だった。
幼少の頃は勉学と武道に明け暮れ、一人だという事さえあまり感じなかった。僻みも受けたが何とも思わなかった。
上京し真選組に入隊してからも、仕事に追われて何処かへ遊びにいく暇はあまりなかったし持たなかった。
非番を有効活用するようになったのは銀時と会ってからだ。休みの楽しさを教えてくれたのは彼だと言っていい。
確かに彼は友人と言える。が、何分年の差が随分とある。
仕事に慣れて伊東の近藤暗殺計画が解決してからは京都の下に集う人間は増えた。
心から慕ってくれる彼等を、京都は上司・部下とはあまり感じなくなった。が、彼等は友人と言うよりは家族である。
そういう訳で、京都は今まで友人らしい友人を作った事がなかった。
しかし、会って数十分しか経たない上にまだ素性も分からないこの少年達に何故か暖かさを感る。
高杉の件に関して何も言わなかったのは図々しいと思ったのか、彼等なりの気遣いなのか。
この少年達なら信じてもいい気がすると思った自分は、既に警察失格だろうか?
そう思いつつ、京都はその場の全員(やっぱりランボは勘定しない)に向かって軽く頭を下げた。

「気遣い感謝する、ありがとう」
「い、いえ!とんでもないっ!」
「侍の魂を捨てるつもりはないが、身分は忘れて気楽にいかせてもらう。これから世話になるな」
「!は、はい!」
「へっ、十代目を困らせるような事すんじゃねーぞ」
「ハハッ、そーと決まりゃ早速部屋の準備しなきゃいけねーな!」
「制服や教科書は俺が手配しておくぞ」
「京都もガッコー行くのー?」

もしかしたら、この世界に留まったまま近藤達と一生会えないままかもしれない。
もしかしたら、元の世界に戻り彼等とは直ぐ別れなければならないかもしれない。
どちらであってもいい。ただ、彼らと過ごす日々が少し楽しみに感じた。

「そうだ、鳶尾さんどうしよう?さすがに漫画のキャラだなんて皆に言えないよね…」
「帰国子女ってのはどうっスか?」
「あ、そうか!鳶尾さん、外国語喋れます?」
「?央国星の言葉なら齧った事はあるが…?」
「宇宙語じゃねー!英語とかイタリア語とかだ!」
「知らんな、知っててもあまり実用性がない。日本語が世界共通語だからな」
「そっちの日本スゲーー!」
「帰国子女作戦はムリか。じゃあ親戚作戦だ。鳶尾、苗字だけでも変えとけ」
「それが一番妥当だな。山本、お前の従姉弟という事でもいいか?」
「従兄妹?いいぜ!じゃ“山本京都”ってなるんだな!」
「さり気に“従姉弟”を“従兄妹”に換えたよ山本…」
「ところでよ、央国星の言葉喋れるんだろ?何か喋ってみてくれよ」
「そうだな…∀Ηβ?τπРСβοОАНбфΩМопСж?」
「「「………」」」
「何て言ったんだ?」
「『真選組だ。御用改めである』だ」
「「分かんねーーー!!」」
「それがあのチョウチンアンコウの星の言葉か…」
「ハハッ、やっぱ鳶尾ってすげーのな!」



   *  *

「っほー。この嬢ちゃんがあの真選組の参謀さんかー」
「…親子揃って読んでいたのか…?」
「俺が読んでたら親父もハマっちまってさ!」

あれから暫くして、京都は居候先の山本の家に挨拶に伺っていた。
どうやら寿司屋を営んでいるらしい。戸を開けると、彼の父親と思われる男が寿司を握りながら2人を出迎えた。
その男が今彼女を興味津々で見詰めている、山本剛である。
息子が今までの出来事を話しても、何一つ疑わずにその話を信じ、居候の件も親戚作戦の件もあっさりと許可が出た。
逆に京都が疑問に思ったが父親曰く、「賑やかで楽しそうだから」だそうだ。親子揃って楽天的思考である。
しかもこの親子、揃いも揃って同じ漫画の愛読家だ。登場人物に抱く印象までほぼ同じである。

「武をよろしく頼むぜ京都ちゃん!困った事があれば何でも言ってくれな!」
「はい。こちらこそ、お世話になります」
「そんな硬くならなくていいぜ!今日から此処ァ鳶尾の“家”なんだからな!」
「武、従姉弟なんだから“京都”だろーが!」
「あ、そっか!」

11の頃に家を飛び出し、帰り辛くなっていた我が家。
入隊直後に「本当の家のように思ってくれ」と言ってくれた近藤と剛の顔が被って見えた。
“家”という言葉に、少なからず感動を覚えた京都だった。



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個人的にリボーンキャラではツナが一番好き。護ってあげたい感じ。
ランボはウザいだけのキャラからどんどん可愛くなったと思う。

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