青そら | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
▽ 3

「それ私の酢昆布ネェェェ!!」

豪快な音を立ててえいりあんの核を突き破り出てきたのは、一度核に呑み込まれた神楽。そしてそれを助けに入った筈が神楽にアッパーカットされている銀時。
渾身の一撃を喰らって咽ていた銀時だったが、すぐに立ち上がり星海坊主と共にえいりあんの核に止めを刺した。
核が内側で潰れる音がして激しく揺れ、触手が奇声を上げてのた打ち回る。
核に乗る全員が振り落とされないようしがみ付き、触手との衝突を必死で避ける。(若干1名は髪を引き抜こうとする娘の手からも必死に逃れていた。)
目の前には軍艦が大砲を構え、今にも砲撃を開始しようとしている。
そこへ思いがけない情報が飛び込んできた。

―早く逃げろォ!!おっさん知らないからな!おっさんは一切責任はとりません!
「頼むとっつぁん!何とか止めてくれぇぇぇ!まだ一人女の子が取り込まれてるんだぁ!その子を助けるまでは――」
―さっきから言ってるだろォ!ガキ一人の命と江戸を同じ秤にかけるなってんだ!そいつ一人のために江戸をえいりあんの巣にする気かァァ!

「……おいおい、もう一人女って…」
「ちょ、銀さん……何で恭さんまで連れて来たんですか!?」
「連れて来てねーよ、真選組んトコに置いて来たわ!…くそッ、何でついて来たんだよ…!」
「…お前、それであの娘が納得したと思ってんのか?」
「……なに…?」

顔に焦燥の色が浮かぶ銀時を、冷ややかに見遣って星海坊主が口を挟む。
睨んでくるが怖くなどない。今この男がしているのは自分と同じ事だ。
自分は神楽を守るために意地でも傍に置こうとし、この男は彼女を守るために突き放した。
どちらも相手を大切に思うが故にとった行動。だがそこには、あるべきものがない。

「――彼女の意志はどうなんだ?」
「っ」

唇を血が滲みそうなほど強く噛む銀時。
俯いた視線の先にポトリと落ちた黒い何か。
えいりあんの口から零れ落ちたそれは――三つ編みにされた髪。
無理矢理食い千切られた、恭の髪………新八の息を呑む音が聞こえた。

「っの、やろォ…っ!」
「!?銀さん、あれ…!」

低く唸り、頭上にある触手に斬りかかろうとする銀時。
しかし迫り来る触手の口元を見た新八が制止の声をかけた。
目を凝らすと牙の隙間から覗く、手。
誰かが声を漏らした瞬間、その手がえいりあんの口を抉じ開けた。
えいりあんの唾液にまみれ、灰とえいりあんの青い血で汚れた恭がずるりと落ちてきた。

「恭さん!!」
「おい恭、しっかりしろ!」
「丸腰だと!?こんな状態で一体どうやって…!」

「……銀、さ…?」

抱き留めて名前を呼ぶ銀時と新八。
あちこちに擦り傷と青痣ができていて、片方の髪は千切り取られ肩に届くくらいしかない。
いつも腰に下げていた刀が無く、何故か両の掌に火傷の跡……たった一人で必死に戦ったことが痛いほどに伝わる。
薄く目を開けて自分を呼ぶ恭を見て唇を噛む銀時。今度こそ口の端から血が流れた。
顎を伝うそれを恭はぼんやりと見詰めて、ゆっくりと指で拭った。

「銀さ、…私…悔しかった、んです…」
「恭?」
「あの時、突き飛ばされた時……私はまだ弱いって、言われた気がした…」

そんなことない、と言いたいのに言えなかった。
温かい指が口元を、血の滲むそこを優しく撫でるから。荒い呼吸を落ち着かせながら必死に訴えようとするから。
瞳の奥底に強い意志が宿っているように見えて、口を挟めなかった。

「私もっと、強くなります…心配かけないくらい…だから隣で、一緒に戦わせて下さい…」

眼を見開く銀時。
言葉だけではない、その掌。
火の気のないこの場で、彼女に火傷ができた理由が解った。

「足手纏いと決め付けて居残るより、傷だらけになってでも…誰かを守りたい」

拳から上がる、炎。
手の甲から小さく灯ったそれはゆっくりと大きくなり、恭の拳を覆う。

「貴方がみんなを背負い込むように、私にも、貴方を背負わせてほしい…!」

奇声を上げて迫る触手の束。
誰もが恭に視線を集める中、恭は真っ直ぐ触手を見据えて燃える拳を突き出し、

炎を放った。



「置いてきぼりは嫌なんです!」




NEXT

この話を完成させるのに2年と10ヶ月の歳月使いました。スランプ恐るべし…
世間の流行も私のブームも変わってるので無理矢理取り入れてみました。

prev / next

[back to list]