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▽ 友達作りの狙い目は転入生

異世界から来ただと?くだらねェ、寝言は寝て言いやがれ。

あのガキをとっ捕まえて話を聞いた時、まず言った言葉はそれだった。



達作りの狙い目は転入生



「やあっ!」

―ビシィッ!

「踏み込みが浅いぜィ。竹刀ももっと素早く!」

―パァンッ!

「〜〜っ!…はっ!」

幽霊騒ぎから一週間が経った。
あの日から、今井は毎日欠かさず屯所にやって来て剣術の稽古に励んでいる。基本的に近藤さんが相手をしているが、総悟も仕事をサボってアイツの稽古に付き合っている。
山崎を始めとする他の隊士達も、仕事の合間を縫ってアイツに会いに行く。どうやらアイツの努力家なところが隊士達のいい刺激になっているらしい。まぁ、だからと言って監視の目を緩めるつもりはねェがな。

「今日はこれまででィ」
「…はっ、はぁっ…あり、がとーございました…」
「お前なァ、そこは『あともう一本!』とか言う場面だろィ」
「でも……はっ…仕事の邪魔に、なるかもしれんし…」
「気にすんな。俺ァ暇だから何時でも見てやれるぜィ」
「暇じゃねーだろ暇じゃ!テメェ何仕事サボってやがんだ!」
「あ、土方さんいたんですかィ?影が薄くて全然気付きやせんでした。恭気付いてたかィ?」
「え?うん、まあ…」
「あそっか、恭の場合はタバコ臭の所為で何処でも分かっちまうのか、お気の毒に」
「上等だ抜きやがれ総悟。今度は俺がお前の相手だ」

何時の間にかこいつらは名前呼びのタメ口で話す仲になっている。多分総悟が無理矢理させたんだろう。年が近い所為か、総悟は矢鱈と今井に構いたがる。こいつが警戒しないって事は少なくとも害は無いという事か…?
そういや初めて稽古をつけた時、竹刀の握り方も構えも全然知らなかったな。あのド素人さは演技でも出来ねーだろう。ありゃマジで剣が出来ねー。あいつが攘夷浪士だって線は殆ど消えた。
だが、俺が監視を続ける理由は別にある。


   *  *


「妖刀だよ、よ・う・と・う」

13件にも及ぶ連続殺人事件。攘夷浪士の一集団を皆殺しにし、下手人は今も行方不明。
この事件で、合計13の攘夷浪士のグループが消滅し死者は3桁に及んだ。一見只の仲間割れに聞こえるし敵が減るのは悪い話じゃねーが、どうも腑に落ちねー。13件どれもこれも下手人が見つからねーなんて偶然とは思えねー。誰かが裏で手を引いてるのか?
そう思っていた矢先、松平のとっつぁんに呼び出されて聞かされた話がこれだ。妖刀だと?くだらねェ、そんなオカルト臭ェ話があってたまるか。

「トシ、今回の事件全部に同じ刀の目撃情報があったの知ってるだろ?」
「ああ。聞いたところによると全員同じ鍛冶屋で買ったっつってたらしい」
「え!ウソ!皆同じ鍛冶屋でって、刀が独り手に動いてるって事!?」
「それだよソレ。その刀が妖刀なの」

何を馬鹿な、と思った。確かに同じ刀が13件全部に存在してたり、全員入手先が同じ鍛冶屋なんて奇妙過ぎる。が、だからと言ってそれを妖刀と決め付けるのはどうだろうか?

「今までにも何回かあったのよ、下手人不明の連続殺人事件。調べてみたらアラ不思議」
「か、刀の目撃情報があったって事……?」
「それだけじゃねーよ?この刀にはな、こわーい伝説があるのよ」
「伝説だァ?くだらねェ、そんな非科学的な事があるかよ」
「トーシ、伝説をナメちゃいかんよ?特に、コイツは神様が落とした怨霊の塊かも知れねーんだよ?」
「お、怨霊ォォオ!?」

おいおい勘弁してくれ。妖刀だの神サマだの胡散臭ェ。近藤さんも簡単に信じんじゃねーよ。
とっつぁんによると、何の宗教かは不明だがそん中ではエラい身分の神サマだが信者は少ないらしい。よくそんな情報手に入ったな。

「……で、その神サマとやらはどういったモンなんだ?」
「聞いたところによると、その神サマ達は時空と空間を操作する力を持ってるんだと。で、何らかの拍子にポロンと…」
「刀を落しちゃったって事!?要するに呪われた刀が俺達の世界で暴れてるって事!?」
「しょーゆーことー」

ふざけんな。妖刀だか何だか知らねーが、薄気味悪ぃマネしやがって。
取り敢えず、その刀は見付け次第鑑識行きだな。いや、妖刀やら神関連なら神社か?
そうやって、その頃はとっつぁんの話は半信半疑で流していた。

が、まさか本当にその刀が現れるなんて思ってもみなかった。

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