青そら | ナノ
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「そうか、そんな事があったのか…」
「いや〜天人が地球に来てから世の中何でもアリになりやしたねェ」
「え?あの…信じてくれるんですか?」
「おう!その眼は嘘を吐く人間には見えないからな」
「…ありがとうございます…」
「土方さんが行き過ぎた尋問するから、こいつ俺達の事疑ってるじゃねーですかィ。マジ死ねよ土方」

痛い所を突かれ、土方は眉間に皺を寄せる。近藤はそれを宥め、改めて恭を見ると少し申し訳なさそうな顔をした。

「恭ちゃん、すまないが俺達も立場上君の刀だけを見逃す事はできないんだ。そのままだと攘夷浪士に目を付けられる」
「けど、どうしてもってんならいい案があるぜィ。あんたが帯刀許可の試験を受けりゃいいんでィ」
「試験!?でも私、剣道やった事ないんですけど……」
「帯刀の許可を得るには必ず要る資格だ。お前が望むなら俺達が稽古をつけてやる」
「この時代なら立派な護身術になるぞ?どうする?」

今まで竹刀を握った事なんて一度もないのに、いきなり攘夷浪士に対抗する剣術なんて。
暫く恭は迷ったが、直ぐに決意が固まった。黒桜から貰った物は、やっぱり常に持っておくべきだ。

「わかりました、その試験受けます。私に剣術を教えて下さい」
「よし!任せとけ恭ちゃん!」


   *  *


近藤達との話を終えて再び庭に来て見ると、銀時達がぐったりと横になっていた。土方は恭の背中を押して、其方の方へと向かわせた。
その後、近藤は神楽に恥を忍んで(?)トイレについて行ってもらった。その様子に土方は大きな溜め息を吐き、銀時達に向き直り声を掛ける。
その間、恭は山崎に話し掛けられていた。さっきの尋問の所為か、彼女が気になるようだ。

「へ〜九十九さんの薬局のバイトしてるんだ。俺達よくお世話になってるよ」
「そうなんですか?じゃあこれからもよろしくですね?」
「うん。あ、今井さんのこと、局長みたいに恭ちゃんって呼んでいい?」
「勿論、そう呼んで下さい」
「…おい山崎仕事しろ。そんで今井も調子に乗んな、まだ保留の状態だからな」
「保留も何も、恭さんは何も悪い事はしてませんよ!僕等が証人になります!」
「お前等とセットだと余計怪しいんだよ」
「んだとォ!?どういう意味だコラァ!」
「あーあ、また始まっちまいやしたねェ」

例の如く喧嘩を始めた銀時・土方。新八が宥めるも、やっぱり効かない。
そんな3人から抜けて、沖田が恭(山崎もいるが視線はばっちり恭)に近寄って来た。

「やっとゆっくり話せたや。沖田総悟でィ、あんた歳は?」
「?17です」
「へぇ〜、俺の一つ下か。んじゃ恭、俺の事ァ“総悟”でよろしくな」
「(今下の名前で…)…そ、総悟…?」
「そうでィ。さん付けとか敬語使ったら殺すからな」
「「(今とんでもなく物騒な事言った!)」」

「ぎゃあああああああああ!!」

2人の心の声が綺麗にハモったその時、野太い叫び声が聞こえた。間違いなく近藤の悲鳴である。聞いた瞬間、銀時達は駆け出した。面倒だが恭も渋々後を追う。

「ゴリラーどうしたカ〜?チャックに皮挟めたカ!?」
「神楽!どーした!?」
「チャックに皮が挟まったアル」
「……神楽ちゃん…」
「どけ!!」

ほんま女の子らしからぬ発言するなこの子は…。近藤の奇妙奇天烈な姿を見ながら、恭は一人ごちた。


   *  *


「…銀さん、何ですか…コレ?」
「何だコラ。てめーらが怖いだろーと思って気ィ使ってやってんだろーが」
「銀ちゃんの手、汗ばんでて気持ち悪いアル」

気絶した近藤を寝かせた後、銀時は幽霊なんていないと吐き捨てて屯所を去ろうとした。
しかし、彼の両手には新八と神楽の手が。2人共怖いなんて言っていないし、そんな様子でもない。銀時の様子を見て、沖田は不意に叫んだ。

「あっ、赤い着物の女ガシャン!!………」
「……何やってんスか、銀さん…」

沖田が叫んだ瞬間に、銀時は直ぐ傍あった押入れの襖に飛び込んだ。しかし彼には同族がいた。その人物は今も、壺の中に頭を突っ込んでいる。
2人に新八・神楽・沖田・恭は冷たい視線を送り、背を向けて歩き出す。2人の慌てた声が聞こえる。

「わかった、わかった。ムー大陸でもマヨネーズ王国でも何処でも行けよクソが」
「「何だ、その蔑んだ目はァァ!!」」
「「「「……あ…」」」」

ふと、4人の動きが止まった。銀時と土方の背後を半ば強張った顔で凝視している。
ハッタリだと思い、銀時は笑ってそう言い放った。が、そんな2人を無視して4人は一斉に部屋から逃げ出した。
話の展開が読めていても、アレと正面からやりあうのは御免だ。
程なくして、2人の男の悲鳴が屯所中に響き渡った。


   *  *


翌日、天人だと判明された赤い着物の女性は近藤さん達によって木に吊るされていた。
何でも、子育てのために餌場を探し求めて真選組の屯所に辿り着いたとか。
あ〜あ、幽霊だと思ったのに、怖がって損した…。でも、これでやっと帰れる!

それにしても、銀さんと土方さんあんな怖がりだったんだ。驚いたと言うより、呆れたって感じ。現に今も、後ろの障子がいきなり開いたからって軒下に逃げ込んでるし。
銀さんはダメ人間だからそんな感じもするけど、まさか土方さんまで…。まあ、あの人達は放っといて帰ろう…あれ?恭さんは?さっきからずっと姿が見当たらない。
そう言えば、僕等が吊るされてた時も恭さんだけ何処かに行ってたし…何があったんだろ?そんな事思ってたら、沖田さんと山崎さんと一緒に恭さんがこっちに来た。

「じゃあ、明日の2時に此処ね」
「はい、よろしくお願いします」
「一秒でも遅刻したら容赦しねえぜィ」
「「(怖ッッ!!)」」
「ほい、行きな」
「あ、はい。失礼します」

少しだけ会話した後、恭さんは僕の所に寄って来た。銀さんと神楽ちゃんも戻って来た。

「恭ちゃん、2時って何?あいつらと何約束したアルカ?」
「剣術の稽古です。帯刀には免許が要るらしくって、その試験のために練習に付き合ってもらうんです」
「…え?恭、お前何時の間にそんなあいつらと仲良くなってんの?」
「そんなんじゃないですよ。銃刀法違反されたら困るからって、それだけですよ」
「……ふーん…」


――――――――――
―――――――
―――――

「え!?副長、信じるんですか?恭ちゃんが異世界の子だって事…」
「…ああ。まあ、あんなモン見せられたらな…」
「あんなモン?一体なんでィ?」
「実はな…あいつから一まず預かったモンがあっただろ?」
「?あの小太刀ですかィ?」
「ああ…。近藤さんと一緒に、とっつぁんに聞いた話だがな…」
「え…?何か、ヤバイんですか、あれ?」

「…ありゃァ妖刀と恐れられた代物でな、昔から時空と空間を行き来して伝説を残してるらしい」
「へーぇ、土方さんの口から伝説なんて言葉が出るたァ…。よっぽど今回の幽霊騒ぎが応えたんですねィ」
「叩っ斬るぞてめー!俺がこんなん信じたのは、実際に妖刀騒ぎがあったからだ!」
「あ、つい最近の連続殺人事件ですか?」
「ああ。攘夷浪士の一集団を皆殺しにし、下手人はどれも不明っていう、あの件だ」
「凶器が見つからなかったんですよね?あれは、下手人は逃亡って話で落ち着いたんじゃ…?」
「それがな…あの小太刀の目撃情報があった、13件全部にだ。だが奴等はみんな鍛冶屋で見掛けたと言ってやがる」
「…神様から貰ったって言ってる恭さんは特別な人物だと…?」
「ま、そういう事だ。だが怪しい事に変わりはねぇ。引き続き監視をするぜ」
「へい」「はい」

「…今井恭、か…」



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ぶっこみ真選組メンツ。
私の中で土方はそんなにランク上じゃないです。喫煙者は全般的に好きじゃない。
でも『燃えよ剣』の土方歳三はカッコいい。

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