青そら | ナノ
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▽ ああやっぱり我が家が一番だわ

―ガラ………バタン

「(…ない)」

―ゴソゴソ………ガチャ

「(…ない)」

「恭さん、どうしたんですか?」
「…あ、新八君…」
「探し物ですか?僕も一緒に探しますよ」
「…あー…ううん、ええよ。お気持ちだけ」
「いいですって。遠慮しないで下さいよ、僕も仕事なくて暇でしたから」
「…恨まんとって、下さいよ?」
「あはは、探し物だけでそんな大袈裟な。大丈夫、恨みませんよ。何探してるんですか?」
「……ぎ、です。すみません…」
「へ?」

「私の下着が無いんです…白地で黒の…――」
「ナマ言ってすいませんでしたァァアアアア!!」

せやから言わんこっちゃない。
目の前でジャンピング土下座をする真っ赤な顔の新八に、私は溜め息を一つ零した。



ああやっぱり我がが一番だわ



宇宙旅行の話が挙がる数日前、私の下着が無くなるという事件が起きた。
消えたのは一着だけやから別に困ることはないけど、一番のお気に入りやったからちょっとショック。
神楽に協力してもらって探したけど、結局出てきたのはゴミとか…
埃まみれの酢昆布(それを食べようとする神楽を私は全力で止めた)とか…
銀さんのであろう怪しいビデオ(銀さんをタコ殴りにする神楽は敢えて放置した)くらい。
まぁ私にあんな可愛らしいモンは縁がなかったんやと心の中で整理をつけて、下着は諦めようと思った。

ところが宇宙旅行から帰って来ると、同じ様に下着が無くなったという人がもう一人現れた。
“無くなった”ではなく“盗まれた”とはっきり主張するその人物は…――

「てめーのノーパン談議はどーでもいいんだよ。こちとらお気に入りの勝負パンツ盗られてんだぞコラ」
「勝負パンツってお姉サン、誰かと決闘でもするのかイ?」
「………」

可憐な顔の裏に恐ろしいオーラを纏った、志村妙…新八のお姉さんやった。
正直、こんなとこでお会いしたくなかったな…。

「新ちゃんから話しには聞いてるわ。志村妙です。よろしくね恭ちゃん」
「初めまして、今井恭です。こちらこそよろしくお願いします」

お妙さんと軽い挨拶を交わし、向かい合って席に座る。そう言えばお妙さんに会うのは今日が初めてや。
新八と同じ綺麗な茶色い髪と目。実際に目の前にしたら凄い別嬪さんやって分かる。羨ましー。
けど…――

「パンツを取り戻した上で、パンツ盗んだ奴を血祭りにあげたい」
「(恐っ!!)」
「もう発言がパンツを履く現代人の発言じゃねーよ。二、三万年前の、裸で槍持って野を駆ける人の発言だよ」

銀さん反応薄っ。もう慣れっこなんか、お妙さんのこの一面に。
せやんな、漫画から考えたら大分関わってるもんな、お妙さんと。

「下着ドロなんて女の敵アル!姐御、私も一肌脱ぎますぜ!」
「よし、よく言った。ついて来い、兄弟の杯を交わすぞ」
「うおっス!」
「待て待て待て!死人が出るよ!君ら二人はヤバいって!!」

一人やる気満々な神楽を連れ、お妙さんは何処かへ出て行ってしまった。
何と言うか…“やる”気と言うより、“殺る”気的なそんな感じのオーラを漂わせて。

「マズいよ、最凶コンビがユニット組んじゃったよ〜」
「ほっとけよ。ホシの目星はもうついてるだろ?」
「え?…一体誰…!」
「………」

貴方もこんなとこでお会いしたくなかったな。まさか初対面の場がファミレスの机の下やなんて…そう、私らの席の下には一匹の厳ついゴリラが潜んでました。
「…あれ、バレた?」とか言うてるけどすんません、バレバレです。
ってかせめて私服で来いよ。警察がストーカーしてるって世間にふれ回ってるようなもんやで?

「なんだぁぁぁぁ!まさか俺を疑ってるのか貴様らぁぁ!!侍が下着泥棒なんて卑劣なマネする訳ねーだろーがぁ!!」
「侍がストーカーなんてする訳ねーだろーが」
「ストーカーはしても、下着ドロなんぞするか!訴えるぞ貴様ぁ!」
「訴えられるのはてめーだ!」
「女の敵…」

今回ばかりは文句を言うたろうと、私はぼそりと呟いた。
するとゴリラさんは私に気付いたらしく、さっとこっちに振り返った。

「?おい万事屋、お前んとこにこんなかわいこちゃんいたか?」

―ブッッッ!!

「わあああ!?ちょっと恭さん大丈夫ですか?」
「えほえほ……うん大丈夫、ちょっと咽ただけ…」

いきなり何を言い出すねんゴリラさん。可愛い?私が?んな訳ないやろ。
あ、そうか。この人お妙さんにフられすぎて性別がメスなら何でも可愛く見えるんや。
うん、きっとそうや。お気の毒に…。

「…はじめまして、今井恭です。よろしく」
「おお、恭ちゃんって言うのか!俺は近藤 勲!こう見えて警察部隊の局長を――」
「なーにペラペラ自己紹介してんのチンピラ警察24時。ストーキングしてた奴が偉そうにしてんじゃねーよ」
「そうですよ。おまけに下着ドロまでして…アナタ真選組を解散させたいんですか?」
「いやいや、ソレめでてー話しじゃねーかァ」
「新八君違うから!俺は下着ドロなんてしてないからァ!コレ見てよお願いいいい!!」

そう言ってゴリラ…げふんげふん、近藤さんは懐から新聞を取り出した。
一面にでかでかと載っている「またも出没、ふんどし仮面」の文字とその写真。近藤さんによると、
その名の通り真っ赤なふんどしの仮面にブリーフ一丁で下着を盗み渡る奇妙な奴との事。
奇妙どころか気色悪いと思ったけど、その言葉は心の中だけに留めておいた。
ここで愚痴を言い出したらなんか止まらなさそうや私。

て、思ってたけど――

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