青そら | ナノ
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「うぅ"〜〜だるい〜〜〜…」

何が体力増強やねん、おもっくそ疲労してるやんか。折角外の気持ちいい風に当たってんのに、汗が退くどころか余計に出てくる。最後の配達が済んだ頃には、歩くのすらしんどくなってきてた。
くそっ、私もあんな気安く受け取るんやなかった。またしても金に釣られたぜ…あっなんか嫌やがめつい子みたいで…とにかくはよ帰って十さんに文句言うたろ。
そう思って重い一歩を踏み出した時…

「…あ、あれ…?…は、ハム…?」

見間違いちゃうと思う。道路を挟んだ向かい側にハム…いや、公子がおった。虚ろな眼をした公子は、せかせかした足取りでどこかへ向かってる……あっこか、漫画で読んだあの場所や。ってことは銀さんらにも危険が迫ってる。ヤバい、はよ知らせな…けど足が思うように動かへん…。
自転車をこげば追いつくんかもしれんけど、今の体で自転車に乗るんは自殺行為に等しい。
何も乗ってない空っぽの自転車を路地裏に停め、盗られんように二重ロックをして、公子の後を追った。
十さんへの連絡なんて後回しや。今は銀さんらの安全の方が大事!


――――――――――
―――――――
―――――

案の定、公子はそれらしい怪しい店に入っていった。
追いかけようと思たけど、ええ加減体が限界や。もう立ってるだけでも汗が噴き出てくる。正直即刻どっかで休みたいとこやけど、そうはいかへん。早く銀さん達の応援に行かな。
いや待て。ここで正面から入ってったら、あのおっかない天人連中と鉢合わせしてまう。そや、銀さんが落ちたあのトイレの窓がええ。上手くいけば銀さんが落ちる前に助けられるかもしれへん……!
重い体を引き摺って薄暗い道に回った。そっち側には裏口らしきドアはない。かわりにゴミ置き場があって、その屋根から梯子が設けられていて、上の階へと続いていた。元気やったらもっと探せたやろうに!今はそんな事をしてたら梯子を上る体力がなくなってまう。
何度も落ちそうになりながらゴミ置き場の屋根をよじ登り、ようやく梯子に手を掛けられた。思ってたのより三倍ほど高い気がするのは疲労感MAXの私が見てる幻覚やと思いたい。とりあえずこの梯子を登る事しかできへん。くっそー、帰ったら絶対十さんしばきの刑な。
覚悟を決めて、棒どころか丸太のように動かない足を梯子に掛けたその時やった。

―パリィィーーン!!
「!?え?…ちょ、ぎ……!!」

遠く上の方で何かが割れる音がした。見上げると、物凄い勢いで落ちて来る影が二つ。
銀さんと公子や。
しかもこっち目掛けて落ちて来る。ちょっと待ってや。今受け止める元気すらないで私。

「…うそぉ……」

何か前にも言うた気がする、このセリフ。けどそう言いたくなる状況やった。


   *  *


「…う、ん……?」

どれくらい時間が経ったやろう。気が付いたら私は布団の中におった。
起き上がって辺りを見渡すと知らんお屋敷。清潔と言うより殺風景な部屋やった。ふと自分を見ると着物の帯は外されて枕元に置かれてた。髪も解かれてる。
少なくとも誰かが私を安静に寝かせてくれた事だけは分かった。そう言えば体の重みが無くなってる。薬の効果がキレたんやろか…。
暫くそのままぼーっとしてると、誰かが部屋の中に入ってきた。

「気が付いたようだな。大事なさそうでよかった」

近寄って来た見覚えのある服装に聞き覚えのある声。女の人に負けない位きれいな黒髪の…――

「……桂、さん…?」
「む?俺を知っているのか?まあ、当然と言えば当然だな。それより君は…名を何と言う?」
「あ、すいません遅れました。今井恭です」
「そうか…恭、君は銀時の知り合いか?」
「あ、はい……!そうや、銀時さんは無事なんですか!?」
「心配いらん。恭が下敷きになってくれたお陰で肋骨数本で済んだ。第一あの程度でくたばる男ではない」
「…そうですか…よかった」
「恭こそよく無事だったな。人2人の下敷きになったにも関わらず無傷とは…。そうだ恭、聞きたい事があったのだ。

――君は一体何者だ?」

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