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▽ 全国のコギャル共、門限は守れ

「起きろクソジジィィイイイ!!」
「あ、やってるやってる」

薬局99ドラッグ兼、九十九十八郎さんのお宅。
私今井恭は、一週間ほど前からここでアルバイトをしています。
毎朝聞こえる奥さんの元気な声にも、もう慣れっこです。
ってゆーか奥さんがいらっしゃるんですよ、十八郎さん。めっちゃ以外。

「あら、おはよう恭ちゃん」
「おはようございます、乙美(いつみ)さん。今日の配達はいくつありますか?」
「今のところは無いわ。この薬、あそこの棚に並べてくれるかしら?」
「はい。十さんも早く起きて下さい」
「お前…誰が上司かわかっとるか…?」
「乙美さんです」
「まあ、よくわかってるわ恭ちゃん。あんたも早く起きて手伝いな」
「………」

私一人なら強気な十さんも、乙美さんと一緒やとこの通り。
「男はつらいよ」とはよォ言うたモンや。アレ、使い方違う?



全国のコギャル共、門限は守れ



「何ですか、コレ?」
「体力増強の薬じゃ。体中の骨と筋肉が強くなる。お前のその貧弱な体も多少は強くなるじゃろ」
「…すんませんね貧弱で……」

あっちに頭痛薬、こっちに風邪を引かせる薬(見付けた時思わず二度見した)といった感じでいろいろな商品を運び回って小一時間。思ってたより凄く疲れが溜まって、休憩時間に少し腰を下ろしていた。
そこへ十さんが、何やら怪しげな赤い錠剤を出してきた。体力増強って…ドーピングか!できれば遠慮したい。

「あの…私ちゃんと働きますから、それはちょっと…」
「こいつでバリバリ働いてくれりゃ、今週からの給料は弾むぞ〜どうする?」
「……………」

このジジイ確信犯や…!私が実はお金にがめついって事を知った上で言うてる!
くそっ、悔しいけど体力は欲しいしお金も欲しい。この一回ぽっきりだけと思って受け取った。
口に放り込んで水と一緒に一気に飲み込んだ。錠剤のくせに口に苦味が残る。
途端、

「…うっ!…」

体中に錘が圧し掛かった様な疲労感に襲われた。全身の毛穴から嫌な汗が噴き出る。

「…十さん…体力増すどころか…余計しんどくなったんですが…」
「ふむ…そりゃ副作用じゃ。暫くしたら治まるわい」
「し、暫くって…一体…ど、どれ…くらいですか……?」
「心配するな、小一時間じゃ。すぐ楽になるわ」
「こ、こいちじか……」

その一時間、この苦しみに耐えなあかんってことを理解してない。
ジジイは「いい事してあげた」みたいな満足気な笑みをしてた。凄いムカつく、ぶっ飛ばしたい。
なんか、歩くだけでも汗かくんやけど…。

「ほい、っちゅー訳で恭、配達に行ってこい。途中にでも副作用がキレるじゃろ」
「…えっ!せ、せめて…元気、になって…からに…し、て下さいよ…」
「そー言われても時間が合わんからの〜致し方ないんじゃ。まあ、ほとんど歩いてでも行ける範囲じゃから大丈夫じゃ」
「…そうですか…(じゃあお前が行けや)」

これ軽く拷問やろ。でも、もう反抗する元気もなくなってる。
あんた鬼や!!と心で叫びながら、自転車の荷台に配達品を乗せて出発した。
勿論扱ぐ元気もないから、自転車は手で押して。

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