青そら | ナノ
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▽ 疲れた時は酸っぱい物を

「……お前、それ本気で言ってんの…?」
「…本気です」
「申し訳ないですけど…ちょっと信じ難いですよね、異世界から来たなんて…」
「そうアルカ?わからないこともないネ。この変わった服とか変な喋り方とか、何かそれっぽいヨ」
「いや神楽ちゃん、喋り方は関係ないと思うよ。関西弁の人はこの世界にもいるから」
「大体喋り方ならお前のその時代遅れなアル語の方がグフウッ!」
「黙れよ天パが」
「「(標準語!?)」」
「どーでもいいんだよそんな事は。それよりもあんた、身寄りがないって事は確かかい?」
「え?あ…はい…」
「そこが一番重要じゃないのさ。丁度いい家が2階にあるから、そこで生活するといいよ」

「………え…?」
「おーいババア、何家主の許可無しで話進めてんだよ?」
「何が家主だい、禄に家賃も払わんくせに。大体大家はあたしだよ」
「あ、あの…悪いですよ。こんな身元不明の女を居候なんて…」
「いいんだよ気ィ使わなくて。身元不明なんてモン、もう慣れたさね。あたしが着れなくなった着物が何着かあるから、そいつを着な」
「私も賛成アル!レディは一人より二人の方がいいネ!恭、私と二人で万事屋も商売繁盛ヨ!」
「おめーの何処がレディなんだよ…ったく、しゃーねーなぁ。おいババァ、その代わりこいつと神楽の食費はてめえが持てよ」
「何さり気に誤魔化してんだい!恭の分しか持たないからねぇ!」

「…あはは、まぁこんな無茶苦茶な人達だし家賃も滞納気味なとこだけど、これからよろしくお願いしますね、恭さん」
「…はい、お世話になります」



疲れた時はっぱい物を



銀魂界に引っ越して来てから早くも一週間経ちました。
お通ちゃんのライブから帰ってきてから、お登勢さんを含む万事屋メンバーに私の身の上を正直に話しました。異世界から来た事とか、自分の世界には天人がいない事とか。銀さん達が二次元の人達やって事以外は全部話しました。
案の定最初は疑われたけど、別段気に留める事無く万事屋に迎え入れてくれました。
銀さんでは心許無かろうとお登勢さんは着物やお金をくれたし、神楽は町をいろいろ案内してくれたし…みんなええ人達です。
さて、町並みが大体分かったところで、本格的にバイト探しを始めましょう。


   *  *


「表に落ちてたアル。かわいいでしょ?」

恭が外出したのと入れ違いに、万事屋にとんでもなく大きな犬が転がり込んでいた。
名称の分かる物を拾って来いと銀時に言われて“定春”と明らかに今とって付けた名前を答え、新八にツッコまれる神楽。
どうやら彼女は何としてもこの巨大犬を飼うつもりらしい。

「異世界から来た女に全長3mの犬…とんでもねーモンばっか来んな、万事屋(ここ)はよォ…」

巨大犬に噛み付かれている眼鏡少年を尻目に、万事屋の亭主は溜め息を吐いた。


――――――――――
―――――――
―――――

「…くたばれ天人」

8度目の不採用を言い渡された恭は、ぼそりとそう呟いた。
バイト募集のチラシを貼っているところを手当たり次第に回ってみたところ、店長はみんな天人だった。チラシには地球人不可とは書いていなかったが、どうやら贔屓はあるらしい。つまり、あれこれと言い訳をされて門前払いを食らったという訳である。

「くっそー、いらんのやったら最初から天人募集にすりゃええやん。あ"ー腹立つ。余所者がでしゃばりおって…」

その余所者に神楽や定春、そして異世界から来た自分も入ることを今の彼女は忘れていた。

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