青そら | ナノ
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「#エロ」のBL小説を読む
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「みなさーーーん!今日はお通のライブに来てくれて、どうもありがとうきびウンコ!!」

―とうきびウンコォォォ!!

「………」

買い物先でアイドル助けるって、どんな定番なハプニングやねん。いらんわこんなハプニング。
や、お通ちゃんは悪くないよ。けどこのオタク共がちょっとなぁ………何かムサい。お通ちゃんには悪いけどキリのいいとこで帰らしてもらお。
「エル・オー・ブイ・イー・お・つ・う!!」とか叫んでるどっかで見た事ある人達がおるけどここはシカトや。

……あれ?“帰る”?
帰るって何処に…?そういや私、銀さん達が帰って来たらどうしよう?
このまま居候させてもらえへんやろか?いや、見ず知らずの女を置いてくれる訳ないか…。いっそ正直に話そか、「異世界から来ました★」って。「MÄRの読み過ぎだろオメー早く病院で診てもらえ。大体俺はサンデーじゃなくてジャンプ派だコノヤロー」とか銀さんに言われそう。私かてジャンプ派じゃコノヤロー。でもまぁ、それが普通の発想や。
お礼だけ言うてちゃっちゃと立ち去ろう…安いアパートでも見つけてマダオの如く…――

―ズゴォォォ!!

…あれ?何の音?
ああ、アレか。「食恋族」とかいうありきたりな名前したデカブツ。
……ってちょっとちょっと。それ、お通ちゃんがピンチって事ちゃうん?

「早く逃げるわよ、お通!!」
「いや、腰が抜けちゃって…どーしよ…?」
「お通ちゃ〜ん、僕と一つになろう、胃袋で〜」

ヤバいな。グループの他の奴らはビビって助けに来ぉへん。しゃあない、お通パパが助けに来るまで私がなんとかするか。荒れた会場には楽器やら観客の捨ててったお菓子やらが散乱してる。私には丁度ええ武器やわ。
近くにあったジュースの容器を拾って、デカブツの頭目がけて投げつけた。まだ中に残ってたらしく、奴の頭に当たった時にジュースの残りが散乱して、奴の頭を濡らした。感触はあったらしく、デカブツがこっちを向いた。その隙に、マネージャーさんがお通ちゃんを抱えて連れて行く。
奴がお通ちゃんに気付かん内に第二段を投げた。あっさりそれは躱されたけど、休む暇は無い。誰もおらんステージに駆け上がって譜面台を掴んで、デカブツの向こう脛に思いっ切り叩きつけた。うおォォオオ蘇れ中学時代のソフト部魂ィィイイイ!!
バアァァァンと凄まじい音が会場に響き渡る。多少は効いたか…と思ったけど、どうも全く効いてへんみたい。

…ってかアレ?逆効果やったんちゃう?めっちゃキレてるし。え?ひょっとして私かなりヤバ――

―バシ!! ガン!!

気が付いたら自分の体は宙に浮いてて、そのまま堅い地面に叩きつけられた。
生まれてこの方、壁やら床やらに叩きつけられるなんて事がなかったから、初めての体験。今まで感じた事のない強烈な痛みと恐怖が全身を走った。
痛い痛いいたいいたいイタイイタイ怖い怖いこわいこわいコワイコワイ!!って何泣いてんねん私!道ですっ転んだ子供かお前は!泣くな泣くな泣くな!!今泣いて何になんねん!
そうやって自分と葛藤してる内に、デカブツの次の手が向かってきた。ヤバい、やられる……!

「……おい嬢ちゃん、大丈夫か?ありがとうよ、あいつを助けてくれて」

何時まで経っても衝撃が来ォへん。恐る恐る目を開けると、そこにはスーパーの袋を被ったおっちゃんの背中があった。どうやらお通ちゃんじゃなくて私を庇ってくれたらしい。それに乗じて親衛隊が加勢に入りようやくデカブツは取り押さえられた。
おっちゃんは銀さんが持って来た可愛い花束をお通ちゃんに渡した。そして立ち去ろうとするところを、お通ちゃんは呼び止める。

「今度は薔薇の花束持って来てね。それまで私、舞台(ここ)で待ってるからさ……お父ちゃん!!」

おっちゃんは黙って出て行った。よかったな、お父さん。

「あ、銀ちゃん!この前のねーちゃんアル」
「あ?何でこんなとこに…まぁいい。おいお前戻んぞ。実家に帰る前に事情聴取だかんな」

何や実家って、私は田舎者前提か?…まぁそんなもんか…。
え、事情聴取やって、どうしよ?正直に話す?誤魔化して逃げる?

「誤魔化そうたってそうはいかねぇぞ。万事屋銀ちゃんの目ァ騙せねーぜ」

人の心読まんとってくれませんお兄さん!?わかった、話しゃええんやろ正直に。
くそっ、いらんとこで真面目になりよって……

「お前らも帰んぞ。ジャンプとイチゴ牛乳が俺を待ってる」

ジャンプかいっ!!ひょっとしてジャンプのために真剣になってたん!?私は230円に負けたん!?これやからこの人は嫌やねん。同じ白髪でも、私はアレンの方がよかったわッッッ!!
はあああっ…これから先、どうなるのやら………



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中学時代にソフトボール部だったのは私です。
この設定は今後特に使う予定はないです。

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