『悪戯な祝日』

2010/05/17 08:13



「なぁユフィ、
さっき台所にいたけど何かしてたの?」

年齢の近さからか話しかけやすいのだろう、デンゼルがユフィの居るテーブルの向かいに座り聞いてきた。

しかしユフィはちょっと待って、と呟いただけで一心不乱に何かを書き付けている。

「『心を込めて悪戯しました』
…ユフィ悪戯したの?」

「いやー、これからするんだよ」

こんなとき、デンゼルのユフィの印象は大きな子供のそれだ。メッセージカードはまるで予告状か何かのようで、ユフィの瞳はネコみたいにきらきらしている。

そんな楽しそうにされると、ふてくされがちなデンゼルでも不愉快を越えて楽しくなってくるから不思議だ。

「もしかしてさっきの作業と関係ある?」

「正解〜♪」

「…何したの?」

にまにましているユフィに一抹の不安を覚えて、デンゼルは口を開いた。

「…毒でも入れたの?」

たしか料理をしていたようだった。しかし今はそれさえも確信がない。見たことのない植物の葉やツルは独特の臭いがしてた。

「いや、ただのウータイ伝統料理だけど…今日は『子どもの日』だからね」

「子どもの日?」

「そう、子どもの無病息災をお祈りする日、こいのぼりは知ってるだろ?」

頷くとユフィは嬉しそうに
デンゼルの頭を撫でた。











「なんですか、それは」

「ウータイの料理だそうだ」

いかにも食え、との視線が痛い。

こんなときの
ルーファウス神羅は容赦がない。

これは食べるまで見張っているだろうと諦めて、ツォンはため息をついた。


以前レノのため息には冷徹とも言える視線で不快感を露骨に表していたのをツォンは知っている。

しかし、彼のため息について、ルーファウスが 言及した事はない。

レノは不公平だと文句を言ったがこの青年がそんなことで公平さを欠くワケもない。

「どうした?」

「…頂きます」

しかしその報酬だと言わんばかりに、あの神羅が崩壊したあとは特にこうして何かと面白そうな事を見つけてはツォンや他のタークスを巻き込むのだ。

レノ(の重役会議での露骨なため息のせいで)だけでも充分なのに、悪ガキが2人に増えた。まるで保護者ようだ。


まあもっともこの眼前の美しい青年がレノのような身体を張った悪戯をする訳がないのが唯一の救いだったりするのだが。


「どうした、不味いか?」

「いえ…、美味しいかと思います」


中の肉や野菜やらにも味がついている、
何かの薬草に包まれた米の料理。


ツォン自身初めての味に戸惑いながらもなんとか咀嚼すると控えめに感想を口にした。

その感想にルーファウスは目を見開いたように見えたが、それも一瞬のこと。


「なんだ…
お前はその料理について何も知らんのか」

伏せられた顔の表情は伺えないが、肩が僅かに震えているように見えて、ツォンは怪訝な顔になった。

「…はい、はじめて食べました…が」

「…それ、は『粽』と、言う」

「…チマキ、ですか」

ツォン自身は真面目に応えたつもりだが、それがこの青年には可笑しいらしい。

今度は隠すこともなく笑われてしまった。

「米をまとめるから総(ソウ)、
つまりは宗(ソウ)になったらしい。」

「…はぁ……?」

「…早く気づけよ、親不孝者」





『心を込めて悪戯しました』

『是非とも貴殿の部下にも』

『ご賞味していただきたく』

『粽を贈らせてもらいます』

『皆様の無病息災を願って!!』



「あの女忍者からですか」

「…追伸を読んでみろ」


『ツォンには絶対、ソレ食べさせてね♪』


「……私?」

「共食いだそうだ」

「………。」




「…お前の名はなんというんだ、ツォン?」


†実は粽はツォンと読みます†




ツォンの名前ネタです。

聡(さとる)と書いてツォン
粽(ちまき)と書いてツォン

ツォンツォンしてるとツォンがゲシュタルト崩壊してきました(笑)

その後?
レノに名前をからかわれ激怒したツォンさんをよそに粽はタークスや社長の皆さんで美味しく頂かれたんですよ。デザートは皆さんご存知のお菓子の方のちまきで。


遅くなりましたが5月5日こどもの日記念に




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