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 ポケセンにお母さんから私宛の荷物が届いていたのに気付いたのは、それが届いてから数日のことだった。
 そろそろ私がたどり着くであろう、というのを予想して送ったんだって。私はきっと一生お母さんには勝てない。
 まあそれは置いといて……。お母さんから送られてきたのは少し大きな封筒。皆で顔を見合わせて、ポケセンの部屋に戻ってハサミでちょきちょきと切って、中身を出してみれば、そこにあったのはチケットと手紙。

「サクラへ、抽選で当てたからあげるわ。旅の一息だと思って行ってきなさい……」
「へえ、あの過保護な母さんがねえ……」

 千旭が驚きながら封筒をぺらぺらと見ている。ルカリオはこういった、持ち主の波動を感じることが出来るんだそう。これはなかなか頼もしい。
 千旭が言うにはお母さんからで正しいみたい。それも恥ずかしさとかも感じた、なんて言われたら私も恥ずかしくなるもんだ。

 それを誤魔化すかのようにチケットの行き先を見る。えっと……。

「ジョウト地方」

 頭に浮かんだのはハテナマークだった。

 どこだろう。




*****




「トレビアン!」

 思わず顔を輝かせて歓喜の声が溢れた。
 だって! だってだって! カロスでは見られないような素敵な町並み! 古風溢れる和風な素敵な町並み!! これに興奮するな、なんて無茶だと思うんだ!
 たどり着いたのはジョウト地方のエンジュシティ。
 きらきらと輝きながらも、古風な素敵な空気感のある素敵な町。あぁ、なぜこのような素敵な地方を知らなかったのか。過去の自分が恨めしい……。

 皆も周りの風景が見慣れないのか、顔を少し輝かせながら周りを見渡している。

「よし! じゃあ指定時間まで各自自由行動! 解散!」

 私はそう叫ぶと同時に走りだした。後ろから征良の声が聞こえたけど。私には聞こえませーん! ということで、まずはやっぱり情報を得るために、今回のために買ったジョウト地方ガイドブック! 来るまでに買ったのである。てれててーん! コイツの出番だ!
 えへへ、嬉しいからテンションおかしいのは分かってるんだぞ。でも落ち着けなんて無理だと思うんだ!
 わくわくしながらぺらりとページをめくる。とりあえずどこかでスケッチしたいな。絵を描きたいな。
 そこにはとある特集の記事が書かれている。
 どうやらこの間ここではコンテストが行われていたらしい。それの特集なんだとか。
 優勝したのはイケメンなお兄さんと、可愛らしいパチリス…ちゃん? くん? だったそうだ。うわぁいいなぁ、コンテストなんて見たことないし……。あぁ、少しタイミングが早かったら観れたのかも……残念だ。

「あ、サクラちゃん居たー」

 遠くの方から聞こえた声。そちらを向けば、そこに居たのは海紀だ。海紀は片手を上げながら小走りでこちらにやってくる。

「海紀どうしたの?」
「サクラちゃんなら、まだどこに行くか迷ってるかなと思ってさ」

 図星だ。思わず苦笑いを浮かべた。

「なんか、ここで人気のスイーツとかあるんだって。食べに行かない?」
「おお! 行く行く! 食べ歩きしよう!」

 今度は海紀が笑顔になった。思わずその笑顔につられた。
 だったら皆も一緒に来れば良かったかな。なんて今更か。まあ各自楽しんでくれてることを願おう。
 暫く歩いていれば、その目的地に辿り着いた。けれど人気店なだけあって、少し人が並んでいる。
 まぁしょうがない、よね。
 海紀と目を合わせて列に並んだ。

「……ん?」

 ふと前を見てみると、そこに居たのはとある青年。かなりのイケメンさん。
 あれ、この人見たことある…? あれ、お兄さんの肩に乗ってるパチリスも、なんか、見たことある…ような?
 あ、もしかして…。

 私が確認しようと雑誌を取り出した瞬間、海紀が前に進んでいることに気づいて、慌ててバックにしまって追いつく。
 うん、他人の空似なのかもしれない。気にしないでいいかな。
 
 しばらくするとお饅頭というのを手に入れ、海紀と一緒にどこか良いスポットがないかとさまよう。すると、とある丘が目に入った。

「あそこ! あそこならお饅頭食べながら絵描けそう!」
「確かに良いかもね。じゃあそこにしようか」

 丘の上について、ちょどベンチがあったのでそこに腰掛ける。2人で一緒に腰掛けてお饅頭を口に含む。
 お、おいしいー…!! 粒餡とか初めて食べたけど、すっごいおいしい…!
 ちらりと海紀を見てみれば、彼も幸せそうな表情だ。その表情にこっちももっと笑顔になって、2人で幸せな表情になったとき。

「……あれ?」

 私の声が響いた。海紀がどうしたの? と聞いてくる。けれど、ちょっとそれに答える暇がない。

 え、ちょっと待って? いや待って待って、待ってくださいお願いします。

「……スケッチブックが、どっかいった」

 思わず涙声になりながら、海紀の方を見つめた。

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