get(novel) | ナノ
コガネシティのポケモンセンターへ着いた頃にはすでに辺りは真っ暗で、黒一色に塗り潰された空には無数の星がきらきらと輝きを放っていた。春は間近、あんなに積っていた雪も解け始めてはいるものの、やはり夜は未だ肌寒い。


「へえ、ここって露天風呂なんだ」
「露天風呂!」


ラミネートの施された紙を見ながら、ぽつり呟くロロさんに思わず反応してしまう。だってほら、露天風呂だって!寒い日には打ってつけじゃないか!これは入るしかない。今すぐに、だ。ココちゃんに目配せすれば「今?」なんて驚いたように瞳を丸くしたものの、クスリと笑うと立ちあがってお風呂へ向かう身支度を始める。


「グレアたちも行く?」
「俺たちは後で…」
「もちろん行くよ!はいこれグレちゃんと美玖くんの荷物ね」
「い、いつの間に準備してたんですか…」


驚く美玖さんと共にびっくり。やけに嬉しそうなロロさんを見てから私もさっさと準備を整える。そんなロロさんをグレアが横目で見ていたことは露知らず、荷物をもって足取り軽く部屋を出た。……いざ行かん、露天風呂!





グレアたちと別れて私はココちゃんと脱衣所へ。時間帯が遅いこともあり、籠はどれもこれも空っぽだった。そんな中、ひとつだけきちんと畳まれた洋服が入っている籠が目に入る。それを眺めてから、手早く服を脱いでタオルを巻きつけた。それから扉を横に引いて冷たい石をつま先で歩いてゆく。掛け湯を済まし、ゆっくりお湯に浸かると思わずおっさんのような感嘆の声が漏れた。


「ふえー…あったかーい…」
「ほんと、いいお湯ですよね」


くすくすと笑う声にハッとして、そちらに目線を向ければ先客であろう一人の女の子が少し離れたところからざぶざぶとお湯をゆっくり掻き分けながらやってきた。華奢な身体にまん丸な瞳。わー可愛いー、と心の中で呟くと同時に先ほどのおっさん声を聞かれていたのかと思うと恥ずかしくてお湯の中に一気に潜りたい気分に陥る。


「なまえ…ってあら、こんばんは」
「こんばんは」


後からやってきたココちゃんもお湯につかり三人に。心の隅でココちゃんもおっさんみたいな声だしてくれないかなーなんて思っていた私が馬鹿だった。当たり前の如く普通に入り、目の前の少女と話しをはじめる。私もそれに混ざり、それぞれ簡単に自己紹介を済ませた。彼女の名前は「ヒナリちゃん」というらしい。


「…ということは、ヒナリの手持ちはみんな男ってわけね」


危ないわ。ぼそり呟くココちゃんに私とヒナリちゃんは首を傾げる。ヒナリちゃんの手持ちさんたちは全部で3人。マグマラシの彼方くん、ラプラスの漣さん、そしてパチリスの理央くんという、ヒナリちゃんに合った可愛らしいメンバー。是非ともお会いしたいところである。


「彼方たちも温泉入ってるから…もしかしたら私みたくなまえちゃんの手持ちさんたちとこうしてお話してるかもしれませんね」
「わー!向こうでも楽しくお話しながら仲良くしているのかなあと思うと何だか嬉しくなりますね!」
「ね!」


妙に盛り上がるテンションに湯面をたたくとお湯が跳ねてヒナリちゃんにぴちゃっと当たる。それにぱちくりするヒナリちゃんに謝ろうと顔を上げた瞬間、お湯が舞い上がったと思うと今度は私にお湯がかかった。


「お返しです!」


悪戯に笑うヒナリちゃんに、私も手の平を合わせて両手いっぱいにお湯を掬って放り投げる。お返し、お返し……。きゃっきゃと子供のようにはしゃぐ私とヒナリちゃんは、いつの間にかココちゃんが石の上に座り視線を仕切り板に向けていたことには全く気付かず。


「……そりゃもう楽しくお話しているでしょうね。"楽しく"ね」

prev next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -