NPC暴走 行動7
「ギルド総括本部…なるほど、ギルド長が居た所が怪しいと見るのは頷けるね」
ブランシュの言葉に、アーロンはふむ、と頷く。後者のテオフラストゥスが怪しいと言うのは、まぁあの薬の事やそれまでの言動で既に解りきっていた事だが。納得するアーロンの横で、「でも」とスカルラットが口を挟む。
「多分シェルルゥさんたちが見に行ってるんじゃないですか…?それだったらぼくたちは、当初の予定通り海岸に向かった方が…」
「まぁ、シュトルツくんならあの『影』に遣られた借りを返しに行くだろうしね」
「何々海ー?面白そう!」
二人の話を聞いていたブランシュが、その光を反射する水面のような青い瞳をキラキラと光らせながら此方を向いている。童話でよく見た赤い頭巾を揺らしながら、楽しそうに言った。
「僕も一緒に行っていーいー?何か楽しそうだし」
「私は構わないけど…スカルラットさんはどうかな?」
「あっ、ぼくも大丈夫です!人数多い方が助かりますし…!」
「わーいやった〜!」
ブランシュがピョンピョンと跳ねそうな勢いで喜んでいる所に、ピコンッ、とメッセージの受信音がスカルラットとアーロンの下へと鳴り響いた。差出人はシュトルツから。
『今からそっちに合流します』
「…これだけ?」
「これだけ、みたいですね」
シュトルツにしては簡素な文章である。スカルラットとアーロンがキョトンとしていると、ふわり、と風が吹いた。その方向を向けば、赤いマントと金糸を翻し、シュトルツが降り立ったのである。
「お待たせしました」
「しゅ、シュトルツさん…!?何で空から…」
「スカルさんがやっていたので、私がやっても許されるのではと思いまして」
驚くスカルラットにそう言った後、シュトルツはニコリと微笑みながら、ブランシュの方へと向き直る。
「初めまして。王国騎士でアモル警護総括をしておりますシュトルツと申します。以後お見知りおきを」
「僕はブランシュ、はじめまして〜」
ひらひらと手を振るブランシュに微笑んだ後、シュトルツはキリッと表情を引き締め、アーロンとスカルラットの方へと向き直った。その表情に、スカルラットとアーロンも思わず表情を引き締める。
「さて…私はあの『影』に借りを返さないと気が澄みません。なのでお二人にも…宜しければブランシュさんにも、ご協力願いたい」
「君ならそう言うと思っていたよ、シュトルツくん」
やれやれ、と言った様子でアーロンがクスッと笑う。それにつられて、スカルラットもフフッと笑みを漏らした。
「ぼくも、何もできないままで終わりたくないからね。シュトルツさんに賛成」
「僕も面白そうだし、ついて行くよ〜」
スカルラットの横で小さく手を上げるブランシュを見て、シュトルツはホッと胸を撫で下ろす。そしてあの時の…『影』にやられた時の情景を思い出して剣を握り締めた後、口を開いた。
「それでは、行きましょう…海岸へ」