支離滅裂


好きなのにどうしようもなく怒らせることしかできない。こんな僕を、君は許してくれるだろうか。
僕はエイリアンを演じる道化。対して君は、雷門中のサッカー部部員。敵対する立場の僕たちは、きっと相容れない。
そんなこと、もうずいぶん前から分かっていたのに。
僕の気持ちを知りながら他の奴と楽しげに話す君が憎い。
誰といても笑顔になるのに、僕にだけ態度をくつがえす君が憎い。
僕以外の何かに目を向ける君が憎い。
大嫌いだからこそ、大好きだ。
自分でもおかしな感情だって思うよ。でも、仕方ないでしょ?
全部君が悪いんだ。
血走った眼で僕を見て散々憎まれ口を叩くくせに、完全に拒絶してはくれない。
そんな中途半端な君が悪い。
こんな話をすると、君はきっと僕に向かってこう言うだろう。
「私のせいにするわけ?」
「大嫌いよ、あんたなんて」
二言目には大嫌いと言うくせに、抱きしめても顔を近づけても本気では抵抗しない。
あれ、こうして考えてみると、君もずいぶんちぐはぐだ。嫌いなのか好きなのか全く分からない。
「人のこと言えないだろ」
君を想い、笑みをこぼす。
最近はこの前触れもない笑いが癖になってしまって、仲間達に騒がれる。
自分で言うのもなんだが、かなり気持ち悪い。もしそんなやつが隣にいたら無言で距離をとるくらいにはそう思う。
でもそれが僕だ。間違い無く。
思ってみれば、僕もまた僕自身が嫌いなのかもしれない。
好きなのに嫌いで嫌いなのに好き。矛盾している。
だけど、本当は今まで考えてた事なんてもうどうでもいいんだ。
だってこれから訪れる僕の幸せには関係ないから。
ねえ、そう思わない?
「名前……」
愛しい名前を口に出して、僕は膝の上に転がる頭を優しくなでた。
安らかに閉じられたその瞳は、つい先ほどまで開いていて、僕に向けられていた。
もちろん、憎しみの意を込めて。
でも、その眼が僕を睨むことも、その唇が憎しみの言葉を放つことも、もう二度と無い。
もうじき、エイリア学園から迎えが来る。また、グランと呼ばれる日々が来る。
倒壊した雷門中の校舎は、まだ土煙を上げ軋むような音を発していた。
それを背に、僕は眠る名前の頭をなでる。
ライバルの居ない日々を思うと、退屈であくびが出そうだった。
遠くでサイレンと車のエンジン音が響く。この騒ぎだ。消防署も病院もてんてこ舞いだろう。
もう一度、雷門中を振り返る。
瓦礫と土煙に混ざっておそらくもう息をしていないであろう人の姿も見られた。
いくら名前を手に入れたいからって、ちょっとやりすぎてしまっただろうか。
名前と一緒だったサッカー部の姿はもうどこにもない。あるのは、もはや誰だったかも分からなくなってしまった肉塊だけだ。
全部終わった。終わらせたんだ。何もかも。
そう、君のためだよ。名前……。
暗い空の下、笑っているのは僕だけだった。

離滅裂
(あなたが嫌いでした)
(でもあなたが好きでした)
((どっちつかずの支離滅裂な心は、重荷に耐え切れず崩壊しました))

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