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******玲Side


大根がないこと、僕は端から判っていた。

判っていたから、大根を使う料理を提案し…結果煌が好きな「ぶり大根」に決まった。

煌は主要材料がないことくらい普通はすぐ気づくだろうと呆れ顔だったけれど、言われなくともとうに判っていたんだよ。


「もう…そろそろかな?」


思わず顔を弛ませた時、


「玲く〜〜ん!!! ごめんね、こっちが玲くんの携帯!!!」


待ち兼ねていた愛しい女性が、息を切らせながら走ってきてくれた。

僕の名を呼び、僕の為だけに駆け寄ってくる。


ああ――

たまらない。


「じゃあ早速弥生に電話す…うぐっ」


――芹霞。僕芹霞の携帯持ってきちゃったみたいで、今弥生ちゃんから連絡あって、大至急話したいことがあるから、折り返し弥生ちゃんが連絡欲しいって。

――僕、ちょっと今手が離せないから、悪いけど芹霞来てくれないかな?


僕は芹霞の口に腕を回したまま、細い路地裏に連れ込んだ。

一見犯罪者の僕の目の前に、見慣れた色彩が走っていく。


ばれたな、僕の魂胆。

流石は櫂、流石は番犬。



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