「世界は廻る
孤立した世界の中で生きる人間は他の世界があることを知らずに死んでいく
世界は交差する
軌道がぶつかり合う時
惑星は衝突し、互いの世界にある命を交換する」
読み終えたのか、巻物がしゅるしゅると男の手によって巻かれていく。
何が世界なのか惑星なのか軌道なのか、ちんぷんかんぷんすぎてわからないと頭を抱える。
「詳しく説明してる時間ないんだけどな」
『そんなこと言わずに、わからないものはわからないので、今すぐ簡潔に馬鹿な私にでもわかりやすくお願いします』
「しょうがない、木の葉の里がある世界とキミの世界を二つの星に例えるよ」
『あ、はい』
「ここに二つの星がある。二つの星は数十年、数百年に一度軌道が交わることがある」
懸命に理解しようと言葉を追う。
「その二つの星が交わる時、星たちは互いの持っている命を一つずつ交換するんだ」
『交換ということは、私とこの世界の誰かが変えられた』
「その命が人間とは限らない」
『え、じゃあ、もしかしたら蟻一匹と私が交換された可能性があるってことですよね』
男は静かに頷いた。
命を交換する意味とは何なのか。
それに何故自分が選ばれたのか疑問が残る。
「けれど心配しなくても大丈夫。その交換は一時的なもので、数時間か数日で元の世界に帰れるんだ」
『本当ですか?』
「もちろん。だから名無しには時間がない」
だからだからと男は私の顔を見て苦しそうに表情を歪めた。
「だから、また星が重なった時に会おう。俺は待ってる。名無しが来た時に安心して迎えられるように」
頬に男の手が触れ、思いもよらない行動に、え、と声が出る。
「いつか会おう」
頬から頭へと翳された時、静かに意識が落ちて行った。