バレンタイン(2014)


「はい妖精王様」

なんて言われ、ラズは苦い顔をする。
レイラフォードに訪れたロファース一行は、ラズの家にお邪魔していた。
そんな中で、クレスルドは毎回、二階のラズの部屋に上がって来る。

「なんの嫌がらせだ、紅(くれない)」
「嫌ですねぇ、今日はバレンタインじゃないですか。あれ?まさかご存知ない?妖精王様ともあろう方が?」

ニヤニヤと笑いながら言うクレスルドに、

「僕はもう王でも妖精でもないって言ってるだろ!バレンタインくらい知ってる!なんのつもりでお前から貰わなきゃいけないんだ?!」

カチンと、頭にきたラズは当然クレスルドに怒鳴った。

「いや、君が誰からも貰えないんじゃないかと…」
「フィレアから貰ったし!!お前の方こそ貰えないんじゃ…」
「いや、それが見ず知らずのお嬢様達から戴いてしまってるんですよこれでも」

なんてクレスルドは言う。

(ぐっ……確かにコイツ、見た目だけはいいもんな)

ラズは悔し気に思った。

「て言うか、愛しのロファースと愛しのレムズにあげたらいいじゃないか」
「え?そんなことしたら気持ち悪がられるじゃないですか」
「僕は!?僕だってお前から渡されて気持ち悪いんだけど!?」
「あはは、長い付き合いじゃないですか」

長い付き合いと言われても、いい思い出なんか一つもなくて、ラズはますます顔をしかめる。

「ほら、はい。受け取って下さいよ、ラズ」
「…捨ててやる」
「酷いですね」

なんだかんだラズは受け取った。
すると、クレスルドがそれとは別に一粒チョコを取り出して、

「ちなみにその箱の中身はこのチョコです。高いやつを買ったんですからちゃんと食べて下さいね」

と、見せてくるので、「ふーん」と、ラズは返事する。その最中、

「むぐっ!」

クレスルドが手にしていた一粒のチョコをラズの口の中に放り込んだ。

ラズは口の中に入れられたチョコの味と、ニヤニヤ笑っているクレスルドの表情で気付く。

これはやっぱり嫌がらせだと言うことに。

「さっ……酒」

涙目になりつつ、ラズが言った。

「そう、チョコの中は、妖精王様が昔からだーい嫌いなアルコール入りです」

そう言ったクレスルドに、

「もう許さん!!その前に水!!水!フィレアさん水ー!!」

バタバタと、ラズは水を求めて階段を降りて行く。

「やれやれ。彼が再び王様になってくれる日は、まだまだ先か」

クレスルドはため息を吐いた。


end

クレスルドはラズをまた王様にしたい感じ。

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