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僕はどうやら、たちの悪い病に罹ってしまったらしい。


→ほんとは知ってる。




ごしごし、ごしごし。
いつも掛けている眼鏡を片手に、ひたすら目をこすり続ける光景が異様に映ったのだろう。
エリオットが読んでいた書物から顔をあげて、こちらを見ているのがわかった。

「リーオ、どうかしたのか?」

案の定、こちらを気遣う色をのせて話しかけてきた主。いつもつんけんしているせいで誤解を受けやすいけど、あれで結構心配性なんだ、エリオットは。

「ん、いや、なんか視界が霞んで見えたんだけど、もう大丈夫みたい」
「…本当に大丈夫なのかよ?」

言いながら座っていた自身のベッドを離れて、こちらに向かってくる…と、思ったら両頬を掴まれた。せっかく再開しようとしていた読書を邪魔されたことで、少なからずむっとする。

「ちょっと、なにするの」
「なにじゃねぇよ。お前、目赤いぞ」

どうやら赤くなっていたらしい。擦りすぎたせいだろうか?眉間に皺を寄せたエリオットがこちらを真っ直ぐに見つめている。

「なぁ、本当にどうもしないのか?」

吊った眼窩にはまる一対の眼球は蒼天の色そのもので、とても綺麗だと思った…言わないけど。

「…大丈夫って言ってるじゃないか。もう離してよ、僕続き読みたいんだけど」
「………」

納得できないみたいな顔をしたエリオットは、それでも一拍おいて手を離してくれた。そのまま無言でくるりと向きを変えるとスタスタと何処かへ行ってしまう。

…怒ったのかな、僕が嘘をついたから。でも説明なんて出来ないんだから仕様がないじゃないか、僕にもよく分からないんだもの。

本に目を落とすも、全然集中出来なくなってしまった。規則正しいリズムを刻む時計の音がいやに耳につく。
エリオットは何処へ行ったんだろう。謝った方がいいんだろうか。でも何を謝ったらいいのかもわからない。…考えれば考えるほどイライラしてきた。勝手に心配して勝手に怒り出すなんて、自分勝手にもほどがあるじゃないか。

突然コトリ、と音がして横を向けば、ティーカップがひとつ、ベッド備え付けのテーブルの上に乗っているのが見えた。

ティーカップを置いた張本人は僕を一瞥すると、無言でそのまま自分のベッドにどかっと座り、何事もなかったかのように読みかけの本を開き始めた。

「………」

本を閉じて湯気をたてているそれに、そろりと手を伸ばす。掌で包み込めば熱がじんわりと広がった。

「………エリオット、このお茶渋いよ…」
「うるせぇ」

口に含んだそのお茶は渋みがあまりに強すぎて、
だからそのせいで視界がまた霞んだに違いないんだ。




(幸せ過ぎて涙がでたなんて、とても信じられないよ)











■―――――――――――
幸せ病なリーオ。
1000knockリクエスト作品。
泣きたいほどの幸せって意外と日常のなんでもない穏やかな時間だったりするよね…っていうのを表現したかったんだけども文才が無さ過ぎてあれなのでここで解説しておくしかない。


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