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言いたいことなら山ほどある。あれとそれとこれと…いや、


→やっぱり、何でもない。




また言い合いになった。
言い合いがエスカレートして、終いにはその辺に置いてある花瓶、絵画、サイドテーブル…ありとあらゆる物がオレ目掛けて飛んできた。
一体全体どういう環境で育ったらこんな凶暴になるんだ。施設にいる他の誰もこんなに凶暴な奴はみたことがないんだが、あれか、三つ子の魂百までみたいな生まれ持った性質とかそんなのか。なら産まれるところからやり直してほしい。

…まぁ、それは、嘘だが。


本を読んでいる時とピアノを弾いているときは人並みにおとなしい(?)奴なのに、口を開けば嫌み嫌み嫌み、嫌みのオンパレード。なんなんだ、何様だ、非常に遺憾だ、ムカつく。オレの口調にもともと難があることは認めてやってもいいが、争いになる原因は大体アイツの放つ言葉が発端だ。
賭けてもいい、あれは!絶対!!かんに障る言葉を選んで発している。しかもそれを隠そうとしてる様子が微塵もみられないのだから、いっそ清々しいというか…

立場上のこともあるのかもしれないが、オレより先にキレる奴というのはほぼみたことがない、ってか初めて会った。しかもそのキレる内容が理路整然としているようで大体理不尽なものなのだ。
驚愕だった。こんな奴は知らない、こんなに真っ直ぐ向けられた、それが嫌悪にしろ、言葉は初めてだった。率直に気持ちをぶつけてくる奴に興味がわいた。何度も何度も会いに行った。何度も何度も言い争った。そして何度も何度も、本当に何度もムカついた。

それでもオレはあの日、リーオに話しかけたことを後悔しない。
言いたいことは山ほどあるし、今まさに言い争いの真っ只中なのだからぶちまけている言葉の数々がそれを物語っている。

「…お前も、本当、懲りねぇな…!なんだってそんな無駄に物投げんだよっ!!オレじゃ、なかったら、…当たってるぞ馬鹿がっ!」

「うるさいっ、しつこいのはどっちだよ!それに馬鹿に馬鹿呼ばわりされる覚えなんてないねっ!このっ、…っ、帰れよ粘着直情不良貴族がっ!」

肩で息をしながら、言い争う。おかしい、こんなことをしにきたわけじゃないのに…なんだよ、くそっ。

「言われなくたって帰ってやるっ!このばか!ばーか!!」

「なにその低レベルな罵り方!?ばっかじゃないの!?!?気も短い上におつむまで弱いなんて、哀れで相手してる僕までなんだか可哀想になってくるよね!」

「はぁ!?気が短いとかお前にいわれたくねーよっ!!!!!…それにどうすんだこれ、大惨事じゃねーか」

周りに落ちている本、絵画に、花瓶の破片やその他諸々に視線をやる。奥の扉を見やれば恐々と覗くチビ達や施設のシスターの姿。
オレに続いて、周りを見渡し、視線に気がついたのか後ろの扉を見やったリーオは、黙って肩からゆっくりと力を抜いた。

「はぁ…」

平静さをようやく取り戻したらしいその様子に息を吐く。周りに散乱した物を拾う為に手を伸ばすと、扉の前にいたシスターが、慌てて手伝おうと出てきたので片手で制した。

「いい、これはオレとリーオがやったことだ、気にするな」

そうは言っても立場上気になるのだろう、あからさまにそわそわとしているシスターに何度と請われて結局手伝って貰うことになった。

細々とした破片やなんやらを全て片付け、最後にサイドテーブルを元の位置に設置する。その上に絵画を掛け直しに真横まできたリーオの口から小さく音が漏れた。

「……ごめん」

すぐさま奴に目を向けたが、こちらを見ることなく、壁に絵画を取り付けている姿だけが映る。
それは聞き取りにくかったが、確かに謝罪の言葉で、オレはその意味をゆっくり頭の中で反芻した。
思いの外絵画を取り付けるのに苦労しているそれを、手を伸ばして手伝う。奴の視線がこちらに向くのを感じて、視線を合わせることなく言葉を発した。

「…こっちこそ、悪かった、な…」

謝ることなど実際そうそうあることではないと気づき、なんだか無性に恥ずかしくなってきた。くそ、頬が熱い。

無事絵画の取り付けも終わり、部屋がほぼ元通りに落ちついたところで時計を確認すれば、既に屋敷に戻る刻限になっていた。帰り支度を早々に済ませ、扉に手をかけ振り返る。ボサボサ黒髪の奴をみれば、奴もオレを見ていた。

「なぁ、」

声を掛ける。口を開くが、言葉が見当たらない、どういうことだ。何で今声をかけた、何を言おうとしたのだろう。
言葉の続きを待つ風のそいつを見、なんだかばつが悪くなって頬を掻いた。

「…いや、また来る」

それだけ言い残して部屋をあとにする。来るな、とは言われなかった。


言いたいことは山ほどあるし、山ほど言い争った。でもきっと肝心なことは何一つ言えてなくて、だから。



それをいうのはまた今度にしよう。

…また、会いに来よう。












■――――――――――――
リーオが怒り狂ってもの投げちゃうほどの言い争いってなんだろうと考える今日この頃…
言葉を交わすごとに言いたいことが、話したいことが増えるんだよ。そしてエリオットは何度となくリーオのとこに通っちゃうんだね、リーオはそんなエリオットを待ってるんだね…!エリリオ可愛いよ。


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