これの続きな感じ


ok?↓





虎徹は悩んでいた。かれこれもう三時間はどうしようかと悩んでいる。
自分の目の前にいる子供。それが虎徹を悩ませている原因だった。
事の始まりは数時間前。今日はたまたま一日オフが取れた日で、朝早くから散歩などして気持ち良く過ごしていた所。
急に呼び出しが掛かり、急激にテンションが下がったまま会社へと向かった。
そして上司に問われる。これは一体どういう事なんだ、と。
どういう事も何も、初耳すぎて状況が読み込めない。
慌てる上司、ロイズを虎徹は精一杯宥める。どうしたんですか、何かあったんですか。
落ち着いたロイズに事情を聞けば、何やら小さいだの子供だのすぐ泣くだの…。
ロイズの話では、どうやら相棒であるバーナビーが子供になってしまったらしい。
斎藤から渡された薬を栄養ドリンクと間違えて飲んでしまったとの事。
何をやらかしてんだ、と怒る虎徹。だが虎徹は数日前自身が同じように子供に戻った時の事を知らない。
人の事を言える立場か君は、とロイズに言われても虎徹にはその時の記憶がない。

とにかくいつ元に戻るか分からないバーナビーを連れ、虎徹は自宅へと帰宅した。
虎徹の場合一日で元に戻ったが、バーナビーはどうなるか分からない。
一日かもしれないし、一週間かもしれない。子供に戻ってしまった相棒を見捨てるほど虎徹は落ちぶれていない。
そうして子供になってしまったバーナビーの面倒を見る事になった虎徹。
自宅に連れて来たはいいが、これからどうしようか。

「…なんか、食うか?腹減ってるだろ?」

「いえ、…お気遣いなく」

子供にしてはやけに大人びているような…。彼の昔の事を考えると、いつまでも子供のままだとダメだとでも思ったのだろう。
しかし虎徹からすればこの目の前にいるバーナビーも大人のバーナビーも、同じようにまだまだ子供のように見える。

(素直じゃないのは昔から、か…)

そういえば、自分の娘も今のバーナビーと同じぐらいの年齢だった気がする。
子供なんだからもっと甘えたらいいのに。
両親の死があまりにも早すぎて甘えるという事を知らないのかもしれない。
ふと、自分の娘の事も考えてみた。
自分は故郷を離れ、大都市シュテルンビルドで今や人気のヒーローをしていて、きちんと構ってやれなかった。母親の友恵も病気で入退院を繰り返して娘である楓と遊んではやれなかった。
正義の味方でありたいのに、楓にとっては自分は悪そのものだったのではないだろうか。
バーナビーの親も、アンドロイドの研究で家を空ける事が多かったと聞く。
その分一緒に過ごす時間を大切にしてきたに違いない。
そうなると自分は娘に親として何もしていないような気がする。

「…俺、腹減ったから炒飯作るけど、一応お前の分も作っとくな」

「えっ、あの…だから僕の分は…」

「一応だから、気にすんな。あ、その辺で適当に寛いでていいぞ。…汚いけど…」

「………」

寛ぐ、といっても床には空になった酒瓶や缶があちらこちらに散らばっていた。
こんな事になるんだったら片付けておけば良かった。
だからバーナビーに怒られるのに。
困ったような表情をする幼いバーナビー。こういう所は可愛いのになぁ、なんて。

簡単に二人前の炒飯を作ってリビングへ持っていくと、バーナビーは何やら真剣な面持ちで何かを見ていた。
それは写真立て。虎徹と友恵、そして幼い娘の楓が写っている写真だった。

「どうした?気になるか?」

「…おじさんは、一人でココに住んでいるんですか?」

「ああ」

「写真に写ってる奥さんや娘さんは…?」

その時バーナビーは聞いてはいけない事を言ってしまったと瞬時に理解した。
何故なら、虎徹の表情が一瞬とても悲しそうに歪んだからだ。

「…娘は、俺の実家に預けてる。奥さんは…五年前に病気でな」

「すっ、すみません…」

「なんで謝るんだよ」

「だ、だって…」

きっと情けない顔をしてしまったのだろう。大人なのに、子供に気を使わせてしまうなんて。

「ダメな親だよな、俺」

「え…?」

「娘が今お前と同じぐらいなんだけどさ…俺、父親らしい事全然してあげられなくてな」

今のバーナビーは親として役割を果たせていない自分をどう思うのだろう。

「だから俺は楓のやつに嫌われてんだろうなぁ」

「…そう、ですか?」

「帰るって約束も守ってやれない。ヒーローやってて、市民を守れる事は嬉しいのに。家族の事となると二の次になっちまう。だから…あいつの最期だって…」

ヒーローをやっていると、家族がバラバラになっていく。妻の友恵の最期は看取れなかった。
娘の楓には全然会えない。家族なら自分の気持ちを分かってくれるとでも思ったのだろうか。
だとしたら自意識過剰。愚かな考えだ。

「…大丈夫、ですよ。きっと」

「ん…?」

「娘さんは、きっとおじさんの事嫌いじゃないですよ。自分の親が嫌いな子供なんて、いません」

「自分の子供が嫌いな親も、きっといないぞ」

「…そう…です、ね…」

親は子が大事であるし、子も親が大事だ。必要なのだ。
大切な宝物。親が居なくなってしまったバーナビーには辛いかもしれない。
そんなバーナビーに自分が出来る事と言えば、世界の広さや嬉しい事、楽しい事を教えてやり、傍に居て支えてやる事ぐらいだろう。

「よし、今日は俺と一緒に寝るかバニー!」

「は!?えっ!一緒に寝る…というか今僕の事バニーって…!」

「俺のベッド二人も寝れるかなぁ…あっ、バニーは今小さいから平気か」

「ちょ、僕はバニーじゃなくてバーナビーですよ!あと小さいって言わないで下さい!背が低いのコンプレックスなんですから!」

「ええ?だってお前俺より背デカいじゃんか」

「は…?」

ああ…、と虎徹は思い出す。子供になってしまった彼は記憶まで幼い頃に戻ってしまったのだった。
こんな事言っても今の彼には分かるはずもない。
頭に疑問を浮かべたまま此方を上目遣いで見るバーナビーに虎徹は彼の頭をくしゃくしゃと掻き回した。

「ま、とにかく、今日はオジサンと一緒に寝ような!目一杯甘えていいぞ!」

「…それ…ご遠慮してもいいですか…?」

なんやかんやで共にベッドで寝た二人。
目を冷ました時、元に戻ったバーナビーが自身も出した事のないような叫びを上げるとはこの時思ってもいない二人だった。



(こ、こっこてっ!こてつさん!虎徹さん!どっどうして僕は虎徹さんの隣で寝て…!?それよりも僕は昨日の記憶が一切ないんですが!虎徹さん!!)
(朝っぱらから騒がしいやつだなお前は…)

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忸怩様、リクエストありがとうございました!
まさかリトル・メモリーを読んで訪問して下さるようになって下さったなんて…!
シリアスなお話も好きだなんてありがとうございます!!嬉しいです!!
今回いろいろ詰め込んだら長くなってしまってすみません(>_<)
そして兎と虎オンリー…拙い文書ですみません!少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!

リクエストありがとうございました!!




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