・陰陽師:兎
・鬼:虎、牛
・子鬼:楓
・陰陽師パロ
とある森の中。二人の鬼が言い争いをしていた。
「落ち着け虎徹!このままアイツの言う通りにしたら、お前その陰陽師の使い魔になっちまうんだぞ!」
「でもよ!そうしねーと楓が!俺の娘が!!」
数日前、虎徹は一人の男を助けた。どうやら下級の鬼に不意打ちを食らったようで怪我し倒れていた。
それを手当てしてやっただけなのに、どうしてこんな事になったのだろう。
虎徹ともう一人、アントニオは上級の鬼である。下級の鬼と違い、上級の鬼は自我を持ち人の言葉を理解し話せる事ができる。
狂ったのはきっとその男を助けてからだ。変わった格好をしていたからどこかの金持ちの輩だと思っていたのに。
その男は、虎徹達鬼と敵対している陰陽師だったのだ。
その陰陽師は虎徹を気に入り、必要以上に使い魔になれと要求してきていた。
それを虎徹はずっと拒み続けていたのだが、等々その陰陽師は強硬手段に打って出てきたのだ。
「でも、そうしねーと、楓が殺されちまうんだぞ!」
「使い魔になるって事は、一生その陰陽師の下僕になるっつー事なんだぞ!?分かってんのか!?」
「…楓がそれで助かるなら、しょうがねぇよ…」
「しょうがないって、お前…」
虎徹の愛娘である楓が陰陽師であるバーナビーに連れ去られたのは数時間前。
虎徹は脅されていた。使い魔にならないのなら、この娘を殺す、と。
虎徹にとって娘の楓は自分の命よりも大切な存在である。
それをむざむざ殺されるぐらいなら、陰陽師の使い魔になる事なんて容易い。
だけど、こうやって親友と喋り合う事も娘とも会えなくなってしまう。
二つに一つ。どちらかなんて選べない。
「俺は、お前を止めるぞ。むざむざ陰陽師の使い魔なんかになる事ねぇだろ!」
「アントニオ…、でも」
「らしくねぇな、虎徹。お前がそんな事でうじうじするなんてよ」
「楓が人質に取られてんだぞ。どうすりゃいいのかなんて俺にも分からねぇんだ!!」
必死だった。どうすればいいかなんて、分からなくて。
ただただ、時が過ぎて行くだけ。期限は明日の朝。
それまでに答えが出せるだろうか。考えれば考える程焦るだけで答えなんで出る訳ない。
「……アントニオ、俺…決めた」
「虎徹…」
「…これしか、方法はないんだ。悪い、アントニオ、楓の事…頼むな」
「お前、まさか…使い魔になるつもりか!」
「これしか楓を無事に取り戻す方法はないんだ。始めから選択肢は一択しかなかったんだよ」
最初から決められていた選択肢。こうなるように仕向けられていたのだろうか。
それならなんて残酷なんだろう。
早朝。まだ朝霧が晴れない森の中。虎徹は一人立っていた。
少し離れた処には、愛娘の楓を腕に抱える陰陽師、バーナビー。
「…やっと来ましたか。待ちくたびれましたよ」
「助けた恩も忘れやがって…。さっさと楓を返せ」
「忘れてませんよ。ただ、あの出来事が僕を変えてしまったのは事実です。でも楓ちゃんはちゃんと返しますから、安心して下さい」
ニコリと微笑むバーナビー。裏が読めない。
こちらは鬼。陰陽師には力でしか勝てない。鬼には人間ほど考える力がないからだ。
何かあるのは確かなのに。手出しができない。
「ああ、安心して下さい。貴方が僕の布陣に入ってきた事でこの布陣には僕と貴方しか入れません。ですから、余計な邪魔ものは入って来れないので」
「ッ……」
「大丈夫ですよ。貴方が僕と契約さえ交わしてくれれば、後はもうどうでもいいですから」
仕組まれていた罠。こちらが一切手出しが出来ないようになっている。
恐ろしい男だと虎徹は思う。
虎徹は恐る恐る脚を踏みだした。もう、この男からは逃れられない。
逃れられない策略の罠
ニヤリ、と笑ったあの男の顔が憎らしくて堪らなかった。
―――――
虎さん視点でした^^
イナギ様、リクエストありがとうございました!
兎さんがただの黒い人に…。
陰陽師とか、鬼とか…折角リクエストして下さったのに…!
グダグダですみません><
兎さん視点もあります。↓
兎視点