雨の夜の願い

 休み明けの日の雨ほど嫌なものはなくて、それでも日中はどうにか仕事をこなす。そうして夜になれば久方ぶりにオトモダチに連絡をし、都合つくと言われたのでオレの部屋で会う事にした。
「相変わらずダレてんなぁ」
「雨の日は苦手なんだよ、そこへきて今日は月曜だから」
 薄暗い部屋の壁際にあるベッドにオレは寝転がっているけれど、オトモダチの滝川は隣に寝転がる事はなく座ってオレの頭を撫でつつ煙草を吸っている。
「……仕事の量が多かった?」
「それと同時に上司の機嫌が微妙だった」
 面倒くさいよ、なんて言いながら撫でてくる手に集中したくて目を閉じる。雨の日の明るい部屋が苦手な事も、誰かに触られていないと落ち着かない事もコイツは知っている。
 お互いに恋人はいらないって言っていて、けれどもその先の事もしたいからそういう都合のいいオトモダチでいる事になった。
 けれどももうそろそろ、その関係も終わらせないとなぁと思うのはオレがこの手を、そして言葉を紡ぐ声も、何もかも欲しいと願ってしまったから。
 恋人になって起きる摩擦ほど怖いものはなくて、けれども手放すのも怖い。それで気持ちを封じてずるずると続けているオトモダチは、だんだんと心にダメージを喰らうようになった。
(……せめて年内まではオトモダチでいたいなぁ)
 それまでは心を押し殺すから、だからどうかもう少しだけ関われる夜が欲しいと、そう望むのだった。



2019.12.02
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