出席番号16番。7月2日生まれ。身長160p…あるのかなあ。
体重不明。背は前から5番目。
勉強はまあまあ…運動が得意!体育委員。
特徴のあるツリ目で、どこに居ても目立つ桜色の髪と鱗模様のマフラーを首に巻いている。





ナツ・ドラグニルは、




――ちょっと生意気。






ただ今、授業中。
実験室では男女二人ずつ、四人で一つの班編成で行う。生徒達は黙々と作業を進めていた。
試験管を傾けて、中の液体をもう一つの方に移すと徐々に色が変化してくる。
黒板に文字を書く音が聞こえると、教師の声が室内に響いた。
そんな中、手を動かしながら桜色の髪の少年は友人と楽しげに笑っている。

「ゆうべ夜中に窓開けてうっかりそのまま寝ちまったら…、おっ!それもう火消して良いぞ!…朝になって部屋中霜降りてんの」
「ぶははー何だそれー、凍死するよ!」

隣の席の友人に、無邪気な笑顔を向けるナツ。
その姿を目で追いながら、ほのかに頬を染めジーっと見つめている金髪の少女が居た。右サイドで結っている青いリボンが目に付く。

ナツの向かい側に座っている少女、ルーシィ・ハートフィリアは、両頬に手を添えた。
少年がその視線に気付いたのであろうか、少女に視線を向けて、


「ルーシィ!記録取ったか?」
「…えっ!?あたしが取るの?」
「おまえに決まってんじゃん!バーカ」
「バーカって、ナツ!!もう…。えーっと、なんだっけ?」



――ビックリした。それになんで、あたしばっか…。



ナツの隣から返答の声が掛かる。

「“27秒で溶ける”だろ?」

記録を取ろうとしてノートを開くと、
肘をつき顎を右手で支えるナツは、不思議な瞳を向けてくる。

「おまえ一体、何見てたんだよ?」
「…へ?んー…」







『アンタを見てたのよ!』







――なんて、そんなこと言えるわけないじゃない!



ルーシィは一瞬、困った表情を見せたが息を吐き出して、開きかけていたノートを勢いよく閉じた。

「もー!!!なんでいつもあたしばっか記録係なの!?」
「いーじゃん」
「良くない!たまには、アンタがやりなさいよ!!」
「オレ、実験やってんだろ」
「だーかーらー」

妙に冷静なナツに、眉を上げて突っ掛かる。ルーシィは左の人差し指を少年に向けて、

「いつ、実験班と記録班に分かれたわけ!?ズルーい!いっつもあたしばっかでアンタなんて一度も…」
「んあー、うっせえなー」
「何よ!」
「んじゃ、ここは一発公平に、ジャンケンで決めるぞ!!」

――ん?公平って…。

「負けた方が卒業まで記録係だ!やるのか、やらねえのか!?」
「やってやろうじゃない!」

片眉を上げて言い寄るナツに、刃向かった。少年にのせられていることにも気付かずに――。

「おっし!…言っとくけど、負けてからの3回勝負はねえからな!」
「…っ!?言わないわよ。そんなこと!!」
「上等じゃん!」

同じ班員の友人は、眉を吊り上げている二人を見て、呆れている。男女共に深い溜め息を吐いていた。
ナツとルーシィは口を固く結び、見合う。
実験中のざわめきで多少の大きさは消されてしまう為、教師にわからない声で口を開いた。

…ジャンケン、


ポン!!


ナツの右手は、グーの形を出している。お相手の少女の手は、ブイサインの形が見える。

「おっしゃー!!」
「……なんで」

自分が出したチョキの手を目の前に向けて、青褪めた。ルーシィの隣で見守っていた友人は、

「ルーシィ…アンタって」

そう呟くと、手を額に当てた。

「そんじゃルーシィ、よろしくなー!」
「…うっ、もう!!」

諦めてカチカチとシャーペンの芯を出す。目の前では再び笑い合うナツと隣の友人達。
大人しくノートに書き始めると、

「ルーシィは、ジャンケン弱ぇのな!」
「う、うるさい!」

大きな笑い声を耳にして、視線を少年から移した。チラッと前を向くが、すぐに俯く。



ナツは、体育でも球技大会でも…
ジャンケンでも…


負けるということを知らない。




悔しいけれど、



――あたしは、アンタのそこが好きだけど、ね。










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