うちの高校で一番美人なのは、

―――ルーシィ・ハートフィリアだ。

と、言ったのはオレじゃねえけど、

そう言っている奴らの肩越しから見えるあいつと視線がぶつかった。

「ナツって、あれに似てない?…ほら、UFOキャッチャーで取れるー…竜のあれに似てるのよね」

周りにいる仲間がドッと笑い合いオレを見るため、背中を向けてその場から離れた。

つーか、あいつは声がでけえ。

それに他人(ヒト)の顔のことはほっとけっつーの。







「きゃっ!!」
「うわ、ごめん」
「あぶなかったー、…もう、気を付けてよね!」
「ごめん、ごめん」

何事かと身体を捻り、声がした方に目線を向けたらクラスのひとりとぶつかったのであろう彼女が、自分の指先を見ながら口を尖らせていた。

「あー、ハゲちゃった…」
「ルーシィのツメってキレーだよね!」
「気ィ遣ってるからねー」

細い指で自身の金髪を触るルーシィを見ていると、その仕草に時々色気を感じる。

「なによ、ナツ!?こっち見ないでよね!!」
「見てねえよ!…乳デカ女なんて」
「ツリ目!!」
「魔女の手!!」
「はあ?チビ!!」
「んだと!!」

やめやめ・・・、こんなことで張り合うことねえし、大人になれ…オレ。

二人の周りは、“そんな光景はいつものことだな”と特に関心もない様子で、笑っているのであった。







「あ、やっべえ…教科書忘れた」
「おまえも?」
「悪ぃけど、貸してくんね?」

席が近いルーシィへ声を掛けた。
彼女は後ろを振り向き、自分の教科書を手渡す。

「サンキュー!」

ナツは笑顔を見せて、借りた教科書に目を移すと、
意外にもルーシィの教科書には、アンダーラインがいっぱい引かれていることに目を留めた。

――ちゃんと復習してんだな、あいつ。

「ぷ、」

「…何よ、ナツ?」
「いあ、…なーんでもねえぞ」

ナツの声に反応したのか、そっと顔だけ彼の方へ向けてルーシィは疑問符を浮かべた。


再度、開いていたページへ視線を戻して、

7行中5行は引いてある。

―――アンダーラインの意味あんのか?ルーシィ、おまえ勉強苦手だろ?そんな風に見えねえから、余計におもしれーな。




放課後の時間になり、それぞれ所属している部活へと向かう生徒達の中で、サッカー部のナツはユニフォームに着替えてグラウンドへ出ていく。
ボールを蹴ってリフティングをしているところに、先輩が駆け寄ってきた。

「なー、ナツ!ハートフィリアっておまえのクラスだっけ?」
「そうっスけど?」
「付き合ってる奴いないのかなー?」
「…いないみたいっスねー」
「なんで?」
「さあー、…性格キツいからじゃないっすか?」
「性格悪いのか?」
「つーか、キツい…。あと、理想高ぇのかも」
「ふーん、そうか」

部活の先輩と話している最中に、グラウンドから少し離れている校舎の二階から、馴染みのある笑い声が耳に届いた。






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