※(ナツ×ルーシィ ガジル×レビィ グレイ×ジュビア ジークレイン×エルザ描写有り)

執筆:理乃 挿絵:かおり







「はあ〜っ…」

隣から聞こえてくる溜息は本日5度目。
さすがに気になったエルザは、フォークに刺したイチゴケーキを口に運ぶのを止め、右隣を見る。

「今日はやけに溜息が多いな。ルーシィ。何かあったか?」
「べっつにぃ〜。何でもないし」

溜息の主――問いかけられたルーシィは、頬杖をつきながら、いつもの彼女らしくない口調で答える。
さらに何でもないと言いながらも、本日6度目の溜息をつく。

とりあえず、ルーシィからは何も聞き出せそうにないと思ったエルザはそのまま、目の前のカウンターでにこにこしながら「しょうがないわね」と言っているミラジェーンに助けを求める視線を送った。

「ルーシィ、心配することないわよ。女房妬くほど、亭主はモテず…って言うじゃない」
「ち、ち、違いますっ!妬いてなんてっ…っていうか、女房じゃありませんから」
「あら。でも未来の奥さん――」
「違いますからっ!止めてくださいっ!」

ミラジェーンの発言に顔を真っ赤にして否定した後、ルーシィはそのままギルドを飛び出して行ってしまった。



☆★☆★☆

「…ルーシィは一体どうしたんだ?」
「これよ。これ」
「ん?これは…」
「今月発売の週刊ソーサラー」
「?これの一体どこが…」
「この本の3ページ目を開いてみて」
「え〜と、何々…彼氏にしたい男性魔導士ランキング10位から30位」
「そう、そこの12位を見て」
「12位?おっ、ナツが入っているじゃないか…と、いうことは」
「そう、やきもちよ」
「なるほど。しかしナツがこの順位とは…意外だな」

エルザの口からぽろりと本音が漏れる。
ナツはエルザの目から見てもやや幼い印象は受けるが、外見はそれなりに整っている。
だが、ソーサラーで報道される破壊活動の大半が火竜であるナツが行っているのだ。それはソーサラーの読者であれば周知の事実。
こういったランキングでは敬遠されそうなタイプのように見える。

「最初は私もそう思ったのよね」

うふふと笑いながらミラジェーンも相槌を打つ。

「ナツの順位の下にコメントがついてるでしょ。ちょっと読んでみて」
「コメント?」
「そう。こういうランキングでは読者がその人に投票した理由が抜粋されて送られてくるのよ」

そう言われたエルザはナツの下に書かれたコメントを読んでみた。

「ん?何々?街でしつこいナンパをされていたのを助けてくれ、その後は名乗らずに去っていきました。見返りを求めない男らしさが素敵でした…これ、ナツのことか?」
「そう、その下にもいろいろ書いてるでしょ。女の子たちのコメント」

言われて読むと、確かにナツに投票した理由が書かれていた。

・迷子になって泣いていた弟を家まで連れてきてくれた。

・川に落ちた飼い猫を助けてくれた。

・具合が悪くて倒れたところを病院に連れて行ってくれたetc...。

「まあ、ナツはあれでいて優しいからな。それで、ルーシィは何で不機嫌なんだ?」
「コメントに書かれた理由よ」
「理由?いい理由じゃないか」
「そのコメント、みんなナツの内面の評価じゃない」
「まあ、そうだな」
「内面で彼氏にしたいくらいいい男″って思われたことに嫉妬しちゃったみたい」
「そうか…むしろ外見だけで彼氏にしたいに選ばれるよりはいいような気がするが」
「中身で選ばれるってことは、それだけライバルも多くなるってことだから、ルーシィの気持ちもわかるけどね。エルザがいうように外見だけで選ばれると、性格悪かったときに幻滅されやすいし」
「ところで、うちからは他にランクインした奴はいないのか?」

ルーシィの不機嫌の理由がわかったエルザは、今度はランキング自体に興味を示す。

「うちからはロキが2位よ」
「2位か。すごいじゃないか」
「毎年ランクインしてるから、そう意外でもないけどね」
「どんな理由だ」
「ロキの場合はやっぱり容姿を評価するコメントも結構多いわね。それとは別に女性に対する気遣い、優しさも込みで、かっこいいってことみたい」
「まあ、手当たり次第に口説くところと女好きを除けば、それほど欠点もないしな」

初めて会った際に、いきなり口説かれたことを思い出したエルザがしみじみと言う。

「ちなみに1位は誰だ?」
「青い天馬のヒビキ。理由はロキと同じような感じね。票数に関してはかなり僅差よ」
「青い天馬はこういうのの人気は高いからな……まあ、一部例外もいるが…」

うっかり思い出したくない天馬の男のことを思い出してしまったエルザは若干青ざめながら、言葉を吐き出す。

「それで、ナツとロキ以外にはいないのか?」
「あとは…そうね。グレイが8位よ」
「8位?8位か・・・意外なような、そうでもないような」
「グレイは顔だけならロキにもひけを取らないと思うんだけどね」
「ロキと比べると女慣れしてないからか?」
「ううん。グレイにはちゃんとランキング上位にならない理由があるのよ」

言われてグレイのコメント欄を読むと、そこには――。

・イケメンで優しいし、強いし、完璧……あの脱ぎ癖がなければ。

・どこでも脱ぐあの癖さえなければ、今すぐにでも結婚したいです。

・かっこいいけれど、露出癖がすべてを台無しにしてる気がします。

「……」
「…ね?絶対に上位にいけない理由がわかるでしょ」
「…ああ。いつも見てるせいで異常にも思わなくなってきてたが、世間的に見ればおかしいもんな。あの癖」

納得したエルザが深いため息を吐く。




☆★☆★☆

エルザは一息つくと、ふと他のランクインメンバーは誰なのかということが気になり、雑誌に視線を落とす。
今開いている雑誌のページは見開き2ページで6位から15位までの順位がついていた。

トップ5に入った魔導士は誰なのだろうかと前のページを見る。
そこで、目に入った写真に不快感を覚えたエルザは即座にページを閉じた。

「エルザ。どうかした?」
「いや…何でもない」
「なんかすごく不機嫌そうな顔してるけど」
「気のせいだ」
「そう?」
「そうだ」

ひとしきりそんな会話をした後、ミラジェーンは雑誌を手に取り、エルザに差し出す。

「?なんだ?」
「実はこれルーシィのなのよ。渡してくれない?」
「自分で渡せばいいだろう」
「でも、あんな風にからかっちゃったから、しばらく来ないかもしれないわ」
「…わかった。渡しておく」
「ありがとう。ついでに読んでみたら。他のランキングでもうちのメンバー入ってたりするわよ」
「そうか…」

なぜか、やや浮かない表情でバッグに雑誌をしまうエルザに対し、ミラジェーンはいつも通りにこにことしていた。








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