「レビィちゃん、おはよー!」
「おはよ、ルーちゃん!」

教室に入り、鞄を机の横に掛ける。
レビィは違和感を感じて小首を傾げていたが、ルーシィのスカートの丈と袖の長さを見て気付いた。

「あれ?その制服…なんか大きそうだね」
「あ、うん…昨日エルザに借りたんだ」
「エルザに?」
「うん」
「そういえば、私、ここ最近エルザには会ってないなー。元気にしてた?」
「元気だよ!そうそうバイト始めたみたい」
「そうなんだ」

小さな頃まではレビィも一緒に、ナツも含めて4人で遊んでいた。
彼女が親の都合で引っ越すことが決まり、団地から離れてしまったが、遠くない距離であった為、今でも仲が良い。

「それにしても結構ダボついてるわね…」

袖を捲ろうか迷いつつ、顔に近付けたその一瞬、あることに気付いてしまった。

――ナツの家の匂いがする。

レビィに気付かれないように、少し捲った袖を元に戻してそれをギュッと握った。





「ふふふ」
「ルーちゃん、今日はずっとご機嫌だね」
「えっ!?いつもと変わらないわよ」
「そうかなー」

お昼休みの時間、お弁当を食べ終えた二人は図書室に本を返しに行こうと席を立った。
すると、放送がかかり日直だったレビィが担任から呼ばれてしまう。

「ルーちゃんごめんね」
「ううん、コレ返しておくわねー」
「ありがとー」

職員室の前で別れて、ルーシィは図書室に向かう。自分の分と頼まれた数冊の本を返却した。
教室へ戻ろうとして廊下を歩いている時、途中で歩きづらくなり、足元に視線を移すと右足の上履きの紐が緩くなっていたことに気付いた。
それを結び直そうとしてしゃがんでいると、廊下の角からパタパタと走ってくる音が聞こえてくる。
その人は後ろを気にしているようで、よそ見をしていた。すぐ目の前で、立ち上がろうとしたルーシィにぶつかる。

「わっ!!」
「きゃあ!」
「いった…」
「だ、大丈夫?」

壁に頭をぶつけたルーシィだったが、痛みを堪えて相手に声を掛けた。
ルーシィと同じ金髪であるが、その子はショートヘアで毛先がふわりと揺れている。
足を擦りながら、その女生徒は振り向いた。

「なんで、こんな通り道に座り込んでんの!?アンタ!」
「ご、ごめんなさい…」

――あれ、なんであたしが謝ってるの?

眉を吊り上げて迫ってくる女生徒に怯むが、顔を合わせる。

「アンタ、確か…ルー」
「…え?」

何かを言いかけると、また廊下の角から数人の大人の声が耳に届いた。

「さっきこの辺のベランダにいたんですよ!」

その声に反応したのか、女生徒がルーシィとの距離を詰めてくる。

「ヤバい、ちょっとかくまって」
「かくまう?って急に言われても、どうやって…」
「ルーシィ先輩がひっかけたんでしょ!?上手く誤魔化してよ!」
「へ?」

――そんなこと言ったって。ん?ルーシィ先輩って言った?この子?

「こっちです、先生!!」

とにかく隠さないと。ルーシィは咄嗟に自分の両腕で女生徒を抱きしめた。

がばっ!

ゆっくりと近付いてくる先生が、二人の横で足を止める。

「何をしているんだ?おまえ達…」
「いえ、その…」
「……」
「可愛かったので、つい…」
「おまえは女を抱きしめる趣味があるのか?」
「いえっ…えーと、多少はあったりなんて…」

顔を隠されている女生徒が、ルーシィの腕を解放した。

「ぶっ…あはは!もうダメ、マヌケすぎる〜〜」
「あっ!見つけたぞ、おまえはまた授業をサボってたそうじゃないか!すぐ職員室に来い!」
「あーあ、捕まっちゃった…ルーシィ先輩の見事な作戦のおかげで」
「……」
「なんでかな…ルーシィ先輩って、ナツ先輩と同じ匂いがするんだね」

――え、ナツ?

不敵な笑みを残して、先生の後をついて行く女生徒。

なに?なんで、あたしのこと知っているの?
ううん、それより

『ナツ先輩と同じ匂いがするんだね』

そんな特別な匂いじゃない、どこの家にもある「よその家」の匂い。

何であの子にわかったんだろう。


もしかして、あの子――ナツと。

「…やだ、考え過ぎよね」









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