※原作でのグレイ・ガジルの名前を使用しておりますが、本人は出てきません。









1−2の教室。


入学式の日から数日が経つ。
朝の登校時、違うクラスの親友と別れて、自分の教室へ入った。

「……」


――新しいクラスって、なんか緊張するわね。


鞄を置くと窓側に寄って、ルーシィは教室内を見回していると、後ろの扉から一人で入ってくる黒髪の少女に気付いた。

「お、おはよう…」
「…あ、おはよう」
「……」

ぎこちない笑顔を向けて、挨拶を交わす。
その子が自分の席に座ってしまうと、ルーシィは外へと目を向けた。


――ナツ、もう教室入っちゃったかな?

考えてみれば、一昨日の入学式の日にチラッと見掛けただけで、

昨日も今日も一度も会ってないし…。

2組と7組じゃ、離れ過ぎだわよ。


「…はあ〜」

深い溜め息を吐いていると、名を呼ばれた。

「…ハートフィリアさん?」

振り向くと、黒髪の少女が微笑んでいる。恥ずかしそうに頬を染めているが、声を掛けてくれた。

「わ、ごめんなさい!…えーっと、」
「私、ハルカでいいよ」
「それじゃ、あたしはルーシィで」
「うん!」

声が弾む。
ルーシィは外を見つつ言葉を続けようとしたが、ハルカが先に口を開いた。

「…ルーシィって、F中出身だっけ?」
「そうよ」
「なんかさ、うちのクラスの男子、地味だよね?」
「そ、そう?」
「カッコいい男、全然いないよ。隣の3組なんてチラッと見ただけで二、三人はいたね」


――すごい、目ざとい人だな…。


「あとね、7組!すっごい子、一人いるのよ!」


――7組!?


ドキッと心臓が鳴ると、ほのかに頬を赤らめる。

「や、…やっぱり?」
「あ…ルーシィもそう思った?」
「うん、知ってる子だから」
「えー、やっぱ有名なんだね。…N中のフルバスターくんって!」
「……」


――ナツのことじゃないんだ…。


頭の中でイメージしていたその人の名が出てこなかったことで苦笑い。
すると、近くで聞いていたクラスの女子が、話の中に入ってきた。

「あー、知ってる!N中のフルバスターくん!7組でしょ?」
「かっこいいよね!」
「ねえ、T中のレッドフォックスくんって知ってる?」
「聞いたことある。目立つよね、あの子!」


高校は、思ったより広いらしい。
どの名前も聞いたことがなく目が点になるが、クスッと笑った。



休み時間になり、肩を叩かれる。

「ルーシィ!トイレ行かない?」
「…うん?」

頷くが何か言いたげな様子のハルカを見て、首を傾げていると、

「ね、1階じゃなくて、2階のトイレ行って良い?」
「良いわよ」
「えへへ…7組の前、通りたいんだ」
「ふふ…そっか」


ルーシィは席を立ち、教室を出て行った。


1−7の教室の前。

開いている扉の向こうに男子が数名居る。
ゆっくりと歩きながらチラリとそちらに目を向けるが、目的のアイツの姿は見えない。
横を向いていると、グイッと腕を引かれた。

「ルーシィ!向こうにフルバスターくんいる!」


――えー、フルバスターなんてどうでもいいのに…。


あたふたして、廊下で立ち止まっていると、

「ドラグニル!プリント見してー」
「んあ?…オレやってねえぞ!」
「うそ、マジかよ!?」
「おい!誰かプリントやってねえかー!」

久しぶりに聞く声に強く反応して、ドキドキと胸が高鳴る。
馴染み深い声のはずなのに、新鮮に感じるのが不思議であった。








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