オルトレマーレの星ひとつ
▼47
「ぼ、僕…
昴姉のこと、怖くないよ!
確かに攫われた時は強い人だと思ったけど、僕のこと気にかけてくれてたし、毎日頭撫でてくれてたし…!
だから僕、昴姉は怖くない!」
正直、驚いた。
私のことが怖くないといったこともそうだが、まさか気まぐれでやっていたあれを覚えていたとは。
一気に喋ったからか顔を赤くして呼吸を整えるフゥ太は、私の手を握ってへらりと笑う。
「あのね、昴姉って呼ばせてもらってもいい?」
「もう呼んでるじゃん
…ほら行くよ、フゥ太。」
やっぱ私一人じゃ道わかんないわ、と言えば、ぱあっとフゥ太の顔が明るくなった。
リボーンが私とフゥ太を二人っきりにしたのはこういうわけか。
やや急ぎ足で歩くフゥ太の頭を黒曜の時のようにポンと撫で、されるがままに足を運んだ。
*
「いらっしゃーい…あ、辻井、フゥ太!」
「武兄!」
「昨日ぶり、山本クン」
「おう!辻井は来ないかと思ってたぜ!」
「リボーンに参加させられたんだよ。」
出迎えてくれた山本クンと軽く会話をしていると、カウンターの奥から店主__まあつまり山本クンの父親らしき人が顔をのぞかせる。
「らっしゃい!嬢ちゃん達が一番だよ!」
「あ、ども。お世話になります。それ運びましょうか?」
カウンターの上に置かれた寿司を指差す。不本意とはいえご馳走してもらうんだからね。礼も言えないようなクズではないよ。
さすが女の子は気が効くね、とカウンター越しに頭を撫でられた。力強いそれに少し髪がぐちゃぐちゃになったが、それをまあいいかと思わせるのはこの人の人望だろうか。
手伝ってる間に人は集まり、なんでここにいるんだと獄寺クンに怒鳴られたり、最後にやってきたランチア達を出迎えたりして慌ただしくパーティーが始まる。
「…あ、これうまいわ。」
犬達にも持って帰ってやるかと剛さん(とさっき教えてもらった)に頼めば、丸ごと一皿もらってしまった。
「いいのかな…」
「気にすんなって!親父人にプレゼントするの好きだから」
あいつらに持ってってやれよ!
山本クンがそう言うなら、ありがたく持って帰らせてもらうことにしよう。
…そういえばクローム来てないな……
リボーンにクロームはどうしたのかと聞けば誘ったけど断られたとのこと。ちょっとクローム!