切り取られた空に拝す
青い空がやけに目に痛い。
そう考えつつ見上げるのは鈍色の車体である。
瞳に写るのは雑多な広告や揺れるつり革、席をとれずに立っている青年や非常識にも化粧をする女性、なかにはそれほど年もいっていないような子供も居る。
電車というものは社会の縮図か何かか、ぼんやりと現実逃避に走り出す。
揺れる電車、視界は先程別の場所に切り替えた。
眩しい程の初夏の日差し、蛍光色を思わせる鮮やかな青、青、青。
雲一つないかと思えば、視界の隅にはらりと雲がちぎれる。
と、遠い景色に目を向けている間に少し時間がたっていたらしい。
先刻任務の為にこの車両に乗り込んだのだが、もう一人は人数の都合で別の車両に行ったのだった。
平和だ、どこまでも平和だ。
そう考えて腕を軽く組んだ途端、車両がぐらりと揺れる。
とっさに身構えて、小柄な身体を他人の波に潰されないように端へ寄る。
何が起きたかはわからないが緊急事態らしい。
百鬼永時は小さくため息をついた。


終わり
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